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おしゃぶりで出っ歯になるのか?専門家が教えるおしゃぶりの使い方

「おしゃぶりを使うと赤ちゃんが出っ歯になってしまう?」
「でも泣き止まないときに便利だし…どんなおしゃぶりを選べば歯並びに影響が少ないの?」

新米ママやパパにとって、おしゃぶりは育児の強い味方である一方、将来の歯並びへの影響が心配になりますよね。

私自身、25年以上にわたり矯正歯科医として多くの患者さんの歯並びを診てきましたが、おしゃぶりの影響で出っ歯の傾向になってしまうケースは少なからずあるように思います。とはいえ、使用期間や頻度など、治療する段階でわからないことがほとんどなので、仮説と言った方が正しいかもしれません。

今回は矯正専門医の立場から、おしゃぶりと出っ歯の関係、正しいおしゃぶりの選び方と使い方について、これまでの知見と科学的根拠に基づいてお伝えします。

おしゃぶりは本当に出っ歯の原因になるのか?

おしゃぶりは本当に出っ歯の原因になるのか?

結論からお伝えすると、おしゃぶりの使用と出っ歯(上顎前突)には関連性があります。しかし、その影響は使用期間や使用頻度、おしゃぶりの形状など様々な要因によって大きく異なります。

おしゃぶりが歯並びに与える影響

おしゃぶりを長期間・頻繁に使用すると、以下のような歯列への影響が報告されています:

  1. 上顎前突(出っ歯)
    上の前歯が前方に突出する
  2. 開咬(かいこう)
    奥歯は噛み合っても前歯が噛み合わない状態になる
  3. 乳臼歯交叉咬合
    奥歯のかみ合わせが上下反対になる

特に乳歯が生え揃う2歳半〜3歳頃まで常用すると、これらの不正咬合のリスクが高まることが研究でわかっています。

影響の出やすさは個人差がある

同じようにおしゃぶりを使っていても、影響の出方には個人差があります。これは、顎の成長パターンや遺伝的要因、筋肉の力の強さなど、子どもによって異なるためです。

たとえば、もともと顎が小さめで歯が大きめの子どもは、おしゃぶりの影響を受けやすい傾向があります。一方、顎の発達が良好な子どもは、比較的影響が少ないこともあるのですね。

「出っ歯になりにくい」おしゃぶりは本当に効果があるのか?

販売店やネットには「出っ歯になりにくい」「歯並びに配慮した」などとうたったおしゃぶりが多く販売されています。これらには以下のような特徴があります。

  1. 薄いニップル設計:前歯にかかる圧力を軽減
  2. 舌のスペースを確保:自然な舌の位置や動きを妨げない
  3. 口腔の発達に配慮した形状:顎や口腔の自然な発達をサポート

こうした特徴を持つおしゃぶりは、一般的なおしゃぶりに比べて前歯への圧力が少なく、理論的には歯並びへの影響が小さいと考えられます。

ただし、私の臨床経験からお伝えすると、どんなに工夫されたおしゃぶりでも、長期間・常時使用すれば歯並びに影響する可能性があります。「出っ歯になりにくい」おしゃぶりも万能ではないことを理解しておきましょう。

専門医が推奨する出っ歯になりにくいおしゃぶりの選び方

出っ歯になりにくいおしゃぶり

それでは、おしゃぶりを選ぶ際のポイントをご紹介します。

月齢に合ったサイズを選ぶ

おしゃぶりは月齢によってサイズが異なります。これは赤ちゃんの口の大きさや発達段階に合わせた重要な区分です。

  • 0〜6ヶ月用:小さめで柔らかいニップル
  • 6〜18ヶ月用:少し大きめで適度な硬さのニップル
  • 18ヶ月以上:乳歯が生えそろう時期で、この時期の使用は最小限に

必ず月齢に適したサイズを選び、成長に合わせて適切なサイズに切り替えていきましょう。

前歯への圧力が少ない形状を選ぶ

おしゃぶりの形状は主に3種類あります。

  • 平型(フラットタイプ):前歯への圧力が比較的少ない
  • 丸型(オーソドンティックタイプ):母乳育児に近い形状だが前歯に圧がかかりやすい
  • マウスピース型:歯科医が開発に関わったものが多く、前歯への圧力を減らす設計

歯並びへの影響を考えると、平型やマウスピース型など、前歯への圧力が少ない設計のものがおすすめです。

オーラルケアを考慮した製品を選ぶ

歯科医や矯正専門医が開発や監修に関わった製品は、口腔の発達に配慮した設計になっていることが多いです。代表的な製品としては、以下のようなものがあります。

  • デンティスター(ChuChu):ドイツの歯科医との共同開発で、薄いニップルと舌のスペースを確保した設計
  • NUK(ヌーク)ジーニアスシリーズ:歯科医推奨設計で、顎の発達に配慮
  • ピジョン 子供の歯科専門医監修シリーズ:日本の口腔研究に基づく設計

これらの製品は一般的なおしゃぶりよりも価格は高めですが、歯並びへの配慮がされている点で検討の価値があるでしょう。

清潔に保ちやすいものを選ぶ

清潔に保ちやすいおしゃぶりを選ぶことも重要です。おしゃぶりは赤ちゃんの口に直接入れるものですから、衛生面は最優先です。

  • 一体成型タイプか、分解・洗浄しやすいもの
  • 煮沸消毒や電子レンジ消毒に対応しているもの
  • 専用ケース付きで衛生的に持ち運べるもの

矯正専門医が教える正しいおしゃぶりの使い方

正しいおしゃぶりの使い方

おしゃぶりの選び方と同様に、使い方も歯並びへの影響を左右する重要な要素です。ここでは、私の経験をもとに正しいおしゃぶりの使い方についても、お伝えさせていただきますね。

使用時間と頻度を制限する

おしゃぶりの影響を最小限に抑えるためには、使用時間と頻度を制限することが最も効果的。あたりまえのようですが、やはりこれらが基本になります。

  • 必要なときだけ使用する
    泣き止まないとき、寝かしつけのときなど
  • 常時くわえさせない
    四六時中おしゃぶりをしていると影響が大きくなります
  • 日中はなるべく外す
    特に遊んでいるとき、機嫌の良いときは外しましょう

適切な時期に卒業させる

研究結果から、おしゃぶりを使用する期間が長いほど歯並びへの影響が大きくなることがわかっています。抑えてほしいポイントは以下になります。

  • 理想的な卒業時期:1歳半〜2歳頃
  • 最低でも:乳歯が生えそろう2歳半までには卒業させるのが望ましい

特に2歳を過ぎてからは少しずつ使用頻度を減らし、卒業に向けた準備をしていくとスムーズです。

おしゃぶりの代わりに適切なスキンシップを

赤ちゃんがおしゃぶりを求める理由の一つは「吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)」による安心感です。おしゃぶりの使用を減らす際は、代わりに以下のようなスキンシップを増やすと効果的といわれています。

  • 抱っこやおんぶ
  • マッサージ
  • 優しい声かけやスキンシップ
  • 一緒に遊ぶ時間を増やす

定期的な歯科検診を受ける

おしゃぶりを使用している間は、定期的に小児歯科医や矯正歯科医の検診を受けることをおすすめします。歯並びへの影響が見られ始めた場合、早期に対応することで症状の進行を防ぐことができます。

出っ歯になりにくいおしゃぶりの具体例

出っ歯になりにくいおしゃぶり

ここでは、歯並びへの影響を考慮して作られた代表的なおしゃぶりをご紹介します。

デンティスター(ChuChu)

特徴

  • ドイツの歯科医との共同開発
  • ニップル部分の厚みが薄く設計され、前歯や上顎への圧力を減少
  • 舌の入るスペースを確保し、自然な舌の動きをサポート
  • 0〜6ヶ月用と6〜12ヶ月用の2サイズ展開

メリット:薄型設計で前歯への圧力が少なく、舌の動きを妨げにくい
デメリット:他製品に比べやや高価(約1,000円前後)

NUK(ヌーク)ジーニアスおしゃぶり

特徴

  • ドイツの歯科医・矯正医師と共同開発
  • 顎の発達に合わせた形状
  • 0〜6ヶ月用と6〜18ヶ月用の2サイズ展開
  • 専用消毒ケース付き

メリット:母乳育児に近い吸い方ができるよう設計され、顎の発達をサポート
デメリット:形状によっては個人差で合わない場合もある

ピジョン 子供の歯科専門医監修おしゃぶり

特徴

  • 日本の小児歯科医監修
  • 口腔研究に基づいた設計
  • 乳首部分は薄く、柔らかい素材
  • 0〜3ヶ月用、3〜6ヶ月用など細かく月齢区分

メリット:日本人の口腔構造に配慮した設計、比較的手頃な価格
デメリット:ニップルの形状によっては前歯への圧がかかる場合も

おしゃぶりに関するよくある質問

おしゃぶりに関するよくある質問

ここで、おしゃぶりに関して、ときおり頂く質問をご紹介しておきます。当院は矯正歯科医院のため、あまり聞かれることは多くないのですが、皆さん気になってることが多いだろうと思います。

Q1: おしゃぶりと指しゃぶり、どちらが歯並びに影響する?

A: 一般的に、おしゃぶりよりも指しゃぶりの方が歯並びへの影響が大きいとされています。指は硬く、おしゃぶりよりも強い力で前歯を押し出すためです。また、指しゃぶりはおしゃぶりより長期間続くことが多く、卒業させるのも難しい傾向があります。

Q2: おしゃぶりを使わないほうがいいの?

A: 一概には言えません。おしゃぶりには赤ちゃんを落ち着かせる効果があり、育児の助けになることは間違いありません。重要なのは使い方です。常時使用を避け、適切な時期に卒業させれば、歯並びへの影響は最小限に抑えられます。

Q3: おしゃぶりの影響で出っ歯になった場合、自然に治りますか?

A: 早期(2〜3歳まで)にやめれば、多くの場合は自然と改善する可能性があります。しかし、長期間使用した場合や、もともと顎の発達に問題がある場合は、自然には治らないこともあります。心配な場合は、小児歯科医や矯正歯科医に相談することをおすすめします。

Q4: おしゃぶりの素材(シリコンvs天然ゴム)による違いはありますか?

A: 素材自体よりも形状の方が歯並びには影響します。ただし、シリコン素材は耐久性が高く変形しにくいため、長期間使用する場合は安定した形状を保ちやすいという利点があります。天然ゴムは柔らかく赤ちゃんの口に優しいですが、劣化しやすい面もあります。

まとめ:おしゃぶりを上手に使って健やかな発達をサポート

おしゃぶりを上手に使って健やかな発達をサポート

おしゃぶりは、適切に使えば赤ちゃんの情緒安定に役立つ便利なアイテムです。一方で、長期間・常時使用すると歯並びに影響する可能性があることも事実です。

矯正専門医として25年以上の経験から言えることは、おしゃぶりそのものよりも「使い方」が重要だということです。

以下のポイントを意識すれば、おしゃぶりの恩恵を受けながら、歯並びへの影響を最小限に抑えることができるでしょう。

  1. 月齢に合った、歯並びに配慮した設計のおしゃぶりを選ぶ
  2. 必要なときだけ使用し、常時くわえさせない
  3. 2歳頃までには卒業させる
  4. 定期的に歯科検診を受ける

赤ちゃんの成長発達は一人ひとり異なります。おしゃぶりの使用に不安がある場合は、かかりつけの小児科医や小児歯科医、矯正歯科医に相談してみてください。

赤ちゃんの健やかな成長と、将来の美しい歯並びのために、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

執筆・編集:竹田 彰

大宮の裏側矯正専門セレーノ矯正歯科の院長、竹田です。25年以上にわたって裏側矯正を専門に治療してきました。歯並びを整えることはもちろんですが、それ以上に、顔全体のバランスを美しく保ちながら、自然な笑顔を引き出すことを信念にしています。

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大宮の裏側矯正専門セレーノ矯正歯科は、口ごぼ、出っ歯、すきっ歯など歯並びでお悩みの方のための目立たない歯列矯正を行っています。歯並びや噛み合わせだけではなく、健康的で美しい笑顔を目指しています。すべての調整はキャリア25年以上の院長が担当しますので、ご安心ください。歯を見せて思い切り笑顔になれる人生を選択しませんか?