歯列矯正って高額な治療費がかかるイメージがありますよね。少しでも負担を軽くする方法があれば、知りたくありませんか?
実は、歯列矯正の費用は「医療費控除」という制度を活用することで、少し負担を軽くできる可能性があります。この医療費控除とは、ざっくり言えば「税金の一部が戻ってくる仕組み」。もちろん、すべての歯列矯正が対象になるわけではありませんが、条件をクリアすれば高額な治療費の一部が還付される可能性があります。
この記事では、埼玉県大宮で25年以上、裏側矯正を専門に歯列矯正をしてきた私、竹田が、医療費控除の仕組みと歯列矯正との関係をわかりやすく解説します。出来るだけわかりやすくお伝えしますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
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も く じ
Toggle医療費控除とは、税金の一部が戻ってくる仕組み
医療費控除という言葉、なんとなく聞いたことがあっても、詳しい内容まではわからないという方が多いのではないでしょうか。ここでは、その仕組みをわかりやすく解説しますね。
ざっくり言うと、1年間にかかった医療費が一定額を超えた場合、税金が一部戻ってくる仕組みです。具体的には、家族全員分の医療費を合算し、一定の条件を満たすと、所得税の一部が還付されるほか、翌年の住民税が軽減される可能性もあります。
たとえば、1年間で家族全員の医療費が20万円かかった場合、基準額(通常10万円)を超えた部分、つまり10万円分が控除対象となり、そこから税率に応じた金額が戻ってくる、ということですね。
どんな医療費が対象になるのか
医療費控除の対象となるのは、病気やケガの治療のためにかかった費用です。診察代、薬代、治療に必要な通院費などが該当します。気にある歯列矯正の費用ですが、一定の条件を満たせば対象になる可能性があります。
その条件とは、あくまで「治療目的」であること。つまり、見た目を美しくするための美容目的の矯正は対象になりません。咀しゃく改善など、機能回復が主な目的である矯正は、医療費控除の対象になる場合があります。
咀しゃく改善すると、見た目も良くなりますので、にわとりが先か、卵が先か、という話のようですが…、たとえば、子どもの不正咬合(噛み合わせの問題)を治すための矯正など、対象になりやすいです。
医療費控除の対象になる具体的な費用
歯列矯正が医療費控除適用となれば、以下の費用が対象になります。
- 歯列矯正にかかる治療費
- 矯正治療のための通院費(公共交通機関を利用した場合)
- 小さな子どもの通院に必要な付添人の交通費
このように、治療目的の矯正治療にかかった費用は、医療費控除を利用することで、税金の一部が戻ってくる可能性があります。
歯列矯正が医療費控除の対象となる条件
それでは、どんな歯列矯正が対象になるのか、もう少し具体的に見て行きましょう。前提として、医療費控除の対象となる矯正治療は「治療目的で行われるもの」に限られますので、以下のようなケースは該当する可能性があります。
歯の機能回復を目的とした矯正治療
交通事故や転倒などによって歯や顎に外傷を負った場合、その影響で噛み合わせが悪くなり、日常生活に支障をきたすことがあります。こうしたケースでは、矯正治療を通じて歯並びや顎の位置を整え、噛み合わせを正常な状態に戻すことが重要です。たとえば、顎関節の位置を調整したり、歯の移動によって失った機能を回復させる治療が行われます。これにより、食事や会話の不便が改善されるだけでなく、顎や歯にかかる余計な負担も軽減されます。
顎関節症の治療を目的とした矯正治療
顎関節症は、噛み合わせの問題が原因となって発症することが多く、顎の痛みや口の開閉時の違和感、さらには肩こりや頭痛といった全身症状を引き起こすことがあります。このような症状を緩和するため、矯正治療が選ばれる場合があります。矯正治療では、噛み合わせを正しい位置に調整し、顎関節への負担を軽減することを目指します。これにより、顎関節症の症状が改善されるだけでなく、口元や顔全体のバランスが整う効果も期待できます。
歯列矯正による睡眠時無呼吸症候群の改善
睡眠時無呼吸症候群の一因として、歯並びや顎の位置の不整が挙げられることがあります。これにより気道が狭くなり、睡眠中の呼吸が妨げられる場合、矯正治療を通じて症状の改善が図られることがあります。具体的には、歯列や顎の位置を調整することで気道を広げ、酸素の供給をスムーズにする治療が行われます。この結果、睡眠の質が向上し、日中の疲労感や集中力低下の改善につながるほか、心血管系の健康リスクも低減します。
発音障害の改善を目的とした矯正治療
歯の位置や噛み合わせの乱れが原因で、特定の音を発音しにくい、あるいは不明瞭な発音になる場合があります。例えば、サ行やタ行の音が不自然になるケースがこれに該当します。矯正治療では、歯列や顎の位置を適切に整えることで、舌や唇の動きがスムーズになり、発音が改善されます。この治療は、特に接客業や講師業といった話すことが仕事の一部である方々にとって、コミュニケーションの質を向上させる大きなメリットとなります。
外科的矯正を伴う治療(顎変形症の矯正)
顎変形症や先天的な骨格の異常がある場合、単なる歯の移動では対応できないことがあります。このようなケースでは、外科手術と矯正治療を組み合わせる治療が行われます。例えば、上下の顎の位置関係を手術で整えた後、矯正治療によって歯列を最適化するプロセスが一般的です。この治療によって、見た目の改善だけでなく、噛み合わせや発音、呼吸機能の向上が期待できます。特に、顔全体のバランスが整うことで、見た目の印象が大きく変わるケースもあります。
歯列矯正が医療費控除の対象外となる矯正治療
一方、美容目的や審美性を重視した矯正は、医療費控除の対象にはなりません。ほとんどが以下、2パターンに分かれるでしょう。
見た目を美しくするためだけの矯正
矯正治療が医療費控除の対象となるためには、「治療の必要性」が求められます。そのため、次のような美容目的の矯正治療は控除対象外とされます。
- 例1: 笑顔をより魅力的に見せたい場合
歯並びに健康上の問題がなく、単に「歯の形を整えて美しい笑顔を手に入れたい」といった理由で行う矯正は、医療費控除の対象になりません。これは、治療ではなく、見た目の向上を目的としていると考えられるためです。 - 例2: 芸能活動やモデル活動を意識した場合
見た目が職業上重要となる方が、仕事での印象を良くするために行う矯正治療も控除対象外です。たとえば、歯の白さや形状にこだわり、審美性を高めるためだけの矯正は、医療費控除の対象にならないケースが多いです。
対象外となる理由
医療費控除は「疾病や健康の改善」を目的とした治療費をカバーする制度です。したがって、機能的な問題がない限り、美容目的の矯正は控除の趣旨に該当しません。
特に治療が必要ではないケース
矯正治療が健康に直接関係しないと捉えられる場合は、医療費控除の対象外となる可能性があります。以下に該当するケースが考えられます。
- 例1: わずかな歯並びの乱れを整える場合
「見た目を整えるためだけに少しの隙間を埋める」といった場合や、軽度な歯並びの乱れを矯正する場合、機能改善が伴わないため対象外となることがあります。 - 例2: 他に症状がない健康な成人
「噛み合わせが少し気になるが、食事や発音に影響はない」といった状況では、治療の必要性が認められにくく、医療費控除の対象外となることがあります。
対象外となる理由
医療費控除は、噛み合わせや不正咬合のように明らかな機能的問題がある場合に適用されます。治療の目的が「健康的な機能回復」でない場合、控除対象として認められません。
医療費控除が適用されそうな場合の備え
医療費控除が適用される場合、歯列矯正にかかる治療費だけでなく、通院に伴う費用も控除の対象となります。ただし、すべての交通費が控除されるわけではないため、注意してください。以下では、対象となる通院費や記録しておくべきポイントについてお伝えしておきますね。
通院費を医療費控除の対象とする場合
歯列矯正の治療のために通院した際の交通費が、医療費控除の対象になるケースがあります。以下が具体的な例です。
- 公共交通機関を利用した場合
電車やバスなどの公共交通機関を利用して矯正歯科に通院した際の費用が該当します。 - 付添人の交通費
小さいお子さんの矯正治療に親が付き添う場合、その付添人の交通費も控除対象となります。たとえば、保護者が同行して電車やバスを利用した場合、両者の交通費が含まれます。
通院費が医療費控除の対象外となる場合
一方で、以下のような費用は控除対象外となりますのでご注意ください。
- 自家用車を利用した場合のガソリン代や駐車場代
車で通院した際の燃料費や駐車料金は、医療費控除の対象にはなりません。
医療費控除をスムーズに受けるために記録しておくべきこと
医療費控除を申請する際には、必要な記録や書類を揃えておくことが重要です。書類を紛失すれば、適用されません。以下の記録を必ず残しておきましょう。
- 治療の領収書
矯正治療にかかった費用を証明するため、歯科医院から発行された領収書は必ず保管しておきましょう。これがないと医療費控除を受けることができません。 - 通院記録
通院した日付と交通費の金額を詳細に記録しておきましょう。たとえば、以下のような内容をノートやアプリに記録しておくと便利です。- 通院日
- 利用した交通機関(例:電車・バス)
- 往復の交通費
- 治療内容がわかる書類
矯正治療が「治療目的」であることを証明する書類も重要です。例えば、歯科医院から発行される「治療計画書」や「診断書」を保管しておくと、控除申請時に役立ちます。
歯列矯正で控除を受ける際、忘れがちな注意点
- 複数年にわたる治療費の管理
矯正治療は年をまたぐ場合があります。それぞれの年に支払った治療費や交通費を分けて記録することが大切です。 - 保険金や給付金の確認
医療費控除の申請額は、保険金や給付金を差し引いた後の金額となります。たとえば、高額療養費や医療保険からの給付金を受け取った場合、その分を差し引く必要があるため、金額を正確に把握しておきましょう。 - 歯科ローンに係る金利および手数料相当分は対象外
歯科ローンは、治療費を信販会社が立替払いし、患者が分割で返済する仕組みです。金利や手数料相当分は、対象外となります。
適切な記録を残しておけば、スムーズに医療費控除を申請できます。計画的に進めて、無駄なく制度を活用してください。
医療費控除の手続きと適用条件まとめ
以下に、歯列矯正に関する医療費控除を申請する際の手続きや条件をわかりやすく表形式でまとめてみました。矯正治療にかかる費用を効率的に控除に活かすための参考にしてください。
※表は2024年4月1日の法令適用
項目 | 詳細内容 |
---|---|
必要書類と手続き | – 医療費の領収書 – 診断書(咀嚼改善など機能回復が主な目的であることを示す正式な診断書) – 確定申告書(医療費控除欄に記入) – 税務署に提出 詳細は国税庁公式サイトを参照してください。 |
適用条件 | – 1月1日~12月31日の1年間に支払った医療費が10万円を超える場合 – 年間所得が200万円未満の人は「年間所得×5%」を超えた額が条件 |
適用範囲 | – 納税者本人 – 生計を共にする配偶者、子供、兄弟姉妹、両親、祖父母など親族のために支払った医療費 |
所得から控除される金額 | 控除額の計算式: (実際に支払った医療費の合計額)-(A+B) 【A】保険金などで補填される金額 |
適用項目 | – 矯正治療の費用(美容目的以外) – 医院までの通院にかかる電車・バスなどの公共交通機関の費用 ※自家用車のガソリン代や駐車場代は控除対象外 |
期間・期限 | – 申請は5年前までさかのぼることが可能 – 治療中に年をまたぐ場合、それぞれの年に支払った医療費を分けて申請 |
歯列矯正で医療費控除を受ける際のポイント
- 診断書を用意する重要性
医療費控除の対象となるかどうかは、治療が「健康の維持・改善を目的としているか」がポイントになります。特に、咀嚼の改善や顎関節症治療を理由にする場合は、診断書が決定的な証拠となります。 - 通院費の記録も忘れずに
通院にかかった交通費は意外と大きな額になることがあります。交通機関を利用した際の金額を忘れずに記録し、申告時に計上しましょう。 - 5年の申告期限を活用する
医療費控除は過去5年間さかのぼって申請することが可能です。これを利用して、過去の治療費が申請漏れになっていないか確認してみましょう。
以上を参考に、医療費控除が活用できそうな場合は、忘れずに矯正治療の費用負担を軽減してください。