「矯正中に口臭が出るって本当?」
「臭いで周りに迷惑かけたくない…」
歯列矯正を検討し始めて、こうした不安が頭をよぎる方がよく見られます。特に仕事や学校で人と接する機会が多い方ほど、口臭への不安はつきものでしょう。
私は裏側矯正を専門とする歯科医師として、日々患者さんと向き合っています。実際のカウンセリングでは「口臭が心配で…」と打ち明けられることも珍しくありません。
矯正中の口臭について、ネット上には様々な情報が溢れています。中には不安を煽るような内容もあり、どれを信じていいのか迷ってしまいますよね。
だからこそ、矯正歯科医の視点から事実をお伝えしたいと考えました。
この記事では、歯列矯正と口臭の関係を正直に解説した上で、それを防ぐための具体的なセルフケアまで紹介します。
あなたが口臭への不安を解消して、自信を持って矯正治療をスタートできるよう、わかりやすくまとめていきます。
も く じ
Toggle実際、歯列矯正中は口臭がきつくなる?

歯列矯正中に口臭が発生しやすいことは事実ですが、個人差が大きく、いずれにしても適切なケアで十分に予防できます。
実際、もともとの口内環境が良好で、適切な清掃習慣を身につけた方の多くは、口臭を気にせず治療を進めています。
矯正そのものが直接的な原因というより、装置によって清掃の難易度が上がることで、口臭につながるケースがあると考えます。
口臭の程度は装置の種類によっても変わる
歯列矯正中の口臭の発生しやすさは、選ぶ装置によっても変わってきます。
【表側矯正】
ブラケットやワイヤーが歯の表面に付くため、食べ物が引っかかりやすく、磨き残しが増えやすい傾向です。
特に装置と歯の境目や、ワイヤーの下に汚れが溜まりやすく、通常の歯ブラシだけでは十分に清掃できないことも多いでしょう。
【裏側矯正】
装置が歯の裏側(舌側)にあるため、舌の動きによって唾液が装置周りに常に循環しやすい環境にあります。
この唾液の自浄作用により、表側矯正と比較すると口臭は発生しにくい傾向ですが、口腔ケアの徹底は必要です。
【マウスピース矯正】
1日20時間以上の装着が必要で、その間マウスピース内部に唾液が循環しにくく、自浄作用が働きにくい状態になります。
日々の洗浄を怠ると、雑菌が繁殖して強い臭いが発生する場合があります。
口臭は多くの方が不安に感じるポイントですが、あなたに合った装置の選択と対策を知っておけば、コントロールしやすくなります。続いて、効果的なケアを行うためにも、歯列矯正中に口臭が起こる原因を見ていきましょう。
歯列矯正中に口臭が発生する4つの原因

ここでは、歯列矯正中に口臭が発生する主な4つの原因を詳しく解説していきます。
原因を正しく理解しておけば、それぞれに合った対策が取りやすいでしょう。
矯正装置の構造で磨き残しが増える
矯正装置を付けると凹凸ができ、通常の歯ブラシでは毛先が届きにくい部分に、食べカスやプラークが溜まりやすくなります。
磨き残しがあると、口内の細菌が繁殖していきます。細菌は食べカスや口内のタンパク質を分解する際に、揮発性の硫黄化合物を作り出すため、これが口臭の直接的な原因となるのです。
さらに、ワイヤーを固定するゴムには食べ物の臭いが吸着し、装置の表面や隙間には細菌や食べカスが付着・蓄積することもあります。
カレーやニンニクなど臭いの強い食事をした後は、装置周辺に残りやすく、口を開けたときにふわっと臭いがすることもあるでしょう。
口呼吸になりやすく口内が乾燥する
表側矯正では、装置が歯の表面から外側に出っ張るため、人によっては唇が閉じにくいことがあります。その結果、無意識のうちに口が半開きになり、口呼吸の習慣が付く場合もあるでしょう。
マウスピース矯正でも、装置の厚みによって口が一時的に閉じにくくなり、口呼吸になる方も見られます。
口呼吸が続くと、口内が乾燥して唾液の分泌量が減少していきます。
唾液には口内を洗い流す自浄作用や、細菌の増殖を抑える抗菌作用があります。この働きが低下すると、細菌が繁殖しやすくなり口臭が強くなることがあります。
一方、裏側矯正は装置が歯の裏側にあるため、表側に出っ張りがありません。唇が自然に閉じやすく、口呼吸による乾燥を防ぎやすいでしょう。
装置による口内炎や傷から臭いが発生
表側矯正では、ブラケットやワイヤーの先端が頬の内側に当たり、口内炎ができることがあります。装置を付けたばかりの頃は特に、口内の粘膜が装置に慣れていないため、ちょっとした動きでも傷ができやすい傾向です。
口内炎が悪化すると、傷口に細菌が入り込んで炎症を起こし、場合によっては膿が出ることもあります。この膿が口臭の原因になるケースも珍しくありません。
また、抜歯をしてから矯正を始めた方は、治りかけの抜歯部分から独特の臭いが発生することもあります。
ただし、これらは一時的なもので、傷が治れば臭いも自然に治まることが多いため、過度に心配する必要はありません。
裏側矯正なら、装置が歯の裏側にあるため頬の内側に当たることがありません。口内炎のリスクを減らせる点もメリットといえるでしょう。
マウスピース矯正で装置の洗浄不足
マウスピース矯正には、装置そのものが臭いの原因になる特有のリスクがあります。一般的に、マウスピースは樹脂でできているため、使い続けるうちに汚れや細菌が付着し、ぬめりや臭いが発生する場合もあるでしょう。
特に注意したいのが、食事の後です。歯を磨かずにすぐマウスピースを装着すると、食べカスが歯とマウスピースの間に閉じ込められてしまいます。密閉された空間で細菌が繁殖し、強い臭いを放つことがあります。
マウスピースは1日20時間以上装着するため、装置を清潔に保つことが何より大切です。洗浄を怠ると、せっかく歯をきれいに磨いても、臭いの染み付いた装置を口に入れることになってしまいます。
以上、歯列矯正で口臭が発生する4つの原因を詳しく解説しました。
歯列矯正中の口臭を防ぐセルフケア6選

歯列矯正中の口臭は、適切なセルフケアを行えば気にならないレベルに抑えられます。特別な技術は必要なく、正しい道具を使って丁寧にケアするだけで十分です。
ここでは、忙しい日常でも無理なく続けられる実践的なケアを6つ紹介していきます。
歯磨きは毎食後と就寝前に丁寧に行う
矯正中の歯磨きは、毎食後に行うのが基本です。通常時より食べカスが装置に引っかかりやすいため、朝・昼・晩の3回に加えて、就寝前にも必ず行いましょう。
特に就寝前の歯磨きは念入りに行ってください。寝ている間は口内環境が悪化しやすいため、1回の歯磨きに5分程度かけて、じっくり丁寧に磨くことを心がけましょう。
【重点的に磨くポイント】
- ブラケットと歯の境目
- ワイヤーの上下の隙間
- 歯と歯茎の境目
- 奥歯の噛み合わせ面
歯ブラシは45度の角度で当て、小刻みに動かすのがコツです。装置に引っかからないよう、優しい力で磨いていきます。
私が患者さんによくお伝えするのは「磨く」というより、「汚れをかき出す」「ブラシを細かく振動させる」イメージで行うことです。
治療中の正しい歯磨き方法について、矯正歯科医のアドバイスを知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
専用ブラシと歯間ブラシで装置周りを清掃
通常の歯ブラシだけでは、装置の細かい部分まで届きません。以下の専用道具を併用することで、清掃効果がぐんと高まります。
| 種類 | 補足説明 |
|---|---|
| ワンタフトブラシ | ・毛先が小さく尖った形状 ・ブラケット周辺や奥歯の裏側に適す ・1本ずつ丁寧に磨ける |
| 歯間ブラシ | ・ワイヤーの下や歯と歯の間を清掃 ・サイズは歯間に合わせて選ぶ ・無理に押し込まず優しく動かす |
| 矯正用フロス | ・糸ようじタイプではなく持ち手のないタイプ ・ワイヤーの下に通して使用 ・歯と歯の間の汚れを除去する |
最初は少し時間がかかりますが、慣れてくれば短時間で全体をケアできるでしょう。
舌ブラシで舌苔を優しく除去する
歯列矯正の有無を問わず、口臭の原因として見落とされがちなのが、舌の表面に付着する舌苔(ぜったい)です。白っぽいコケのようなもので、細菌や食べカスが蓄積したものになります。
この舌苔には、専用の舌ブラシが効果的です。
【舌ブラシの正しい使い方】
- 1日1回、朝の歯磨き時に行うとよい
- 舌の奥から手前に優しく動かす
- 力を入れすぎず、3~5回程度こする
- 舌苔が付いていない場合は無理に行う必要はない
※舌ブラシがなければ柔らかい歯ブラシで代用可
注意したいのは、やりすぎないことです。舌を傷つけると、かえって細菌が繁殖しやすくなる場合があります。
舌がヒリヒリするときは、力が強すぎるサインです。
デンタルリンスやマウスウォッシュを使用
デンタルリンス(液体歯磨き)やマウスウォッシュ(洗口液)は、歯磨きの補助的なケアとして効果的です。
【使用用途】
- デンタルリンス:口に含んでから歯ブラシでブラッシングし、その後吐き出すタイプ
- マウスウォッシュ:歯磨き後の仕上げに口をすすぐだけのタイプ
【効果的な使い方】
- 適量を20~30秒程度かけて口全体に行き渡らせる
- ブラケットやワイヤー周辺を特に意識してすすぐ
- 強くうがいしすぎず、優しく口をゆすぐ
【参考:使うタイミング】
- 朝晩や毎食後:デンタルリンスで丁寧にブラッシングし、歯磨き後にマウスウォッシュで仕上げ
- 臨時外出先:マウスウォッシュで応急ケア
- 就寝前:必ず使用(就寝中は唾液分泌が減少し細菌が繁殖しやすいため)
※製品によって使用方法が異なる場合があります。
矯正中は、アルコールフリーまたは低刺激タイプがおすすめです。デンタルリンスの場合は必ずブラッシングと併用し、マウスウォッシュはあくまで歯磨きのサポート役として活用しましょう。
水分をこまめに摂って口内の乾燥を防ぐ
こまめに水を飲む習慣は、口内環境を整える上でとても効果的です。水分補給によって唾液の量が保たれ、装置周りの汚れも洗い流されやすくなります。
【効果的な水分補給のコツ】
- 1時間に1回を目安にこまめに口を潤す
- 特に口呼吸になりやすい方は意識的に摂取
- 水やお茶がおすすめ(甘い飲み物や酸性飲料は虫歯リスクを高める)
デスクワークの方は、手元に水筒やペットボトルを置いておくと習慣化しやすいです。継続することが口臭対策に役立ちます。
外出先で忙しい時は口をゆすぐだけでも実践
職場や学校などで忙しい時、歯磨きが難しいこともあるでしょう。マウスウォッシュも手元にない場合は、食後に水で口をゆすぐだけでも一定の効果が期待できます。
休憩所やトイレなどで30秒程度、しっかりと口をすすぐことで、装置に引っかかった食べカスを洗い流しやすくなります。ぶくぶくと勢いよくすすぐのがポイントです。あくまでも緊急対応となりますので、歯ブラシの使用は徹底して下さい。
以上、歯列矯正中の口臭を防ぐセルフケアを6つ紹介しました。美しい歯並びを手に入れる道のりを、快適に進んでいきましょう。
まとめ:口臭を気にせず歯列矯正をスタート

改めて、歯列矯正中の口臭は、適切なセルフケアで十分にコントロールできます。毎日しっかり習慣化すれば、口臭を気にせず人と接することができるでしょう。
少し視点を変えると、治療中の口臭を心配する気持ちは、実は大きなプラスになります。なぜなら、口臭への意識が高まることで、口内環境の向上が期待できるからです。
私が診てきた患者さんの中には、矯正をきっかけに初めて、歯間ブラシやワンタフトブラシを使い始めた方、デンタルフロスの重要性を知った方が数多くいらっしゃいます。
こうした丁寧なケアを続けた結果、矯正後は美しい歯並びだけでなく、口内環境も良くなったという声も珍しくありません。これは歯列矯正がもたらす、見過ごされがちな価値といえるでしょう。
矯正歯科医のサポートがあれば心配は軽減
矯正治療中は定期的に歯科医院へ通うため、これが口臭予防の支えにもなります。
【定期通院で受けられるサポート】
- 口腔ケアの改善点をアドバイス
- 口内の変化を継続的にチェック
- 磨き残しやすい箇所を具体的に指摘
美しい歯並びを手に入れるには、患者さんご自身の積極的な努力が欠かせません。ただし、一人だけで頑張る必要はなく、矯正治療は歯科医師と二人三脚で進めていくものです。
当院では患者さんの口内状態を細かく観察しながら、個々に合った清掃方法を具体的にお伝えしています。
実際、最初は磨き方がうまくいかなくても、数回の通院で見違えるほど上達される方が多いです。プロのサポートがあるからこそ、口臭ケアをしつつ安心して治療を続けられます。
見た目と口臭ケアに配慮した選択肢がある
矯正装置が目立つことへの抵抗感と、口臭への不安。この2つを同時に抱えている方には、当院が専門に行う「裏側矯正」がおすすめです。
裏側矯正の魅力は、装置が歯の裏側にあるため外から見えず、仕事で人前に立つ方、接客業の方、営業職の方でも、周囲にほとんど気づかれることなく治療を進められることです。
さらに、記事前半でも触れましたが、歯の裏側は唾液腺に近く、常に潤った状態にあるため、唾液の自浄作用や抗菌作用が働きやすく、表側矯正やマウスピース矯正と比べても口臭への影響が低いといえるでしょう。
裏側矯正に興味をお持ちの場合、実際にどのような流れで治療が進むのか、具体的なイメージを持ちたい方も多いのではないでしょうか。下記の記事で、当院での治療の流れをわかりやすく解説しています。
また、裏側矯正には、口臭だけでなく虫歯リスクも抑えられるメリットがあります。その点を詳しく知りたい方は、下記の記事が参考になります。
今この瞬間が、理想の笑顔への第一歩
口臭への不安で歯列矯正を先延ばしにしている方も多いでしょう。けれど、治療を受けた多くの方が「もっと早く始めればよかった」と矯正後の生活を体験して振り返ります。
歯並びが美しく整うことで、あなたの表情はきっと変わります。自然な笑顔が増え、人と話すことがもっと楽しくなるかもしれません。
鏡を見るたびに感じていたモヤモヤした気持ちが消え、もっと軽やかになる毎日を想像してみてください。
歯列矯正は、あなたの人生に前向きな変化をもたらす大切な決断です。ここまで読み進めてくださったあなたなら、きっと理想の笑顔への一歩を踏み出せるはずです。
当院セレーノ矯正歯科では、25年以上の豊富な経験と技術で、あなたの理想を現実に変えるお手伝いをさせていただきます。



