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八重歯と犬歯の違いは?八重歯放置6つのリスクを矯正専門医が解説

「八重歯と犬歯の違いがよくわからない…」
「この歯は治療が必要なの?それとも大丈夫?」

このような疑問を感じている方はたくさんいらっしゃいます。実際のところ、歯の名称や歯並びについて知識を持つ方は少なく、特に治療を検討している方なら、正確な情報を知りたいと思うのは当然のことですよね。

私は25年のキャリアを持つ歯科医で、現在は裏側矯正を専門に行っています。今回の記事では、多くの方が混同しがちな八重歯と犬歯の違いから、八重歯を放置することで起こるリスク、そして治療法まで、専門医の立場から詳しく解説します。

歯並びで悩まれているあなたの不安を少しでも解消し、理想の口元に向けた選択のお手伝いができれば嬉しいです。

八重歯と犬歯は同じもの?基本的な違い

歯科矯正の相談でよく耳にするのが「八重歯と犬歯って同じですよね?」という質問です。実は、この2つには明確な違いがあります。八重歯は歯並びの乱れを表現する言葉で、犬歯は特定の歯を指す名称です。混同されがちですが、全く異なる概念なんです。

長年の診療経験の中で、この違いを理解されていない患者さんがとても多いことに気づきました。この機会に正しく理解することで、ご自身の歯の状態をより正確に把握しておきましょう。

「八重歯」は歯並びの状態を表す

八重歯とは、歯が正しい並びから外れて重なったり、飛び出したりしている状態のことです。どの歯でも起こり得る現象で、歯科用語では叢生(そうせい)の一種とされています。

多くの方がイメージする八重歯は、おそらく歯列から外側にちょこんと突き出た歯でしょう。これも八重歯の一種ですが、歯が内側に重なっていたり、ねじれて生えていたりする場合も同様に八重歯と呼びます。

私の診療では、患者さんが「八重歯を治したい」とおっしゃる際、実際には様々な歯並びの問題を指していることがわかります。前歯が重なっているケースもあれば、奥の方の歯が乱れているケースもあるんです。

つまり八重歯は、特定の歯を指すのではなく、歯並びが乱れた状況全般を表現する言葉なのです。

「犬歯」は歯の種類を表す

犬歯は、前歯から数えて3番目に位置する歯の名称です。左右上下に計4本あり、その独特な形状から糸切り歯とも呼ばれています。

この歯の特徴は、何といってもその尖った形状にあります。食べ物を引き裂くために進化した形で、肉食動物の牙のような役割を果たしています。また、犬歯は口の中で根が深く、非常に丈夫な歯として知られています。

なぜ犬歯が八重歯と誤解されやすい?

犬歯と八重歯が混同される背景には、犬歯が八重歯になりやすいという事実があります。原因の1つに、歯の萌出時期と現代人の食生活の変化が関係しています。

永久歯への生え変わりでは、通常6歳臼歯や前歯(中切歯・側切歯)、小臼歯が先に生え、犬歯は比較的遅い時期に登場します。ところが現在の食環境では、やわらかい食べ物が増え、咀嚼回数が減少する傾向にあるのです。これにより顎の周りの筋肉が十分に発達せず、歯が並ぶためのスペースが不足するケースが増えています。

そのため犬歯が生えてくる頃には、既に隣の歯が場所を占領していることが多く、結果として歯列から押し出されるような形で生えてしまうのです。

特に上顎の犬歯は下顎の犬歯よりも生える時期が遅く、この現象が起こりやすくなっています。このような状況から「犬歯=八重歯」という誤った認識が広まったと考えられます。正しくは「犬歯が八重歯の状態になることが多い」というのが適切な理解です。

八重歯になった犬歯を放置するリスク6つ

「八重歯って見た目の問題だけでしょ?」と思われる方も多いのですが、実はそれだけではありません。八重歯を放置していると、様々な問題が起こります。

私が長く患者さんを診てきた中で、八重歯が原因で思わぬトラブルに悩まされている方をたくさん見てきました。早めに治療することで、これらの問題はほとんど解決できるため、どのようなリスクがあるのかを知っておきましょう。

犬歯の機能が発揮されない

犬歯は実は「働き者」の歯です。食事の時に重要な役割を果たしているのですが、八重歯になるとその機能が十分に発揮できなくなってしまいます。

具体的には、

  • 硬い食材がうまく噛み切れない
  • 犬歯誘導できず他の歯に負担がかかる

当院の患者さんからも「なんとなく食事がしにくい」という声をよく聞きます。犬歯が正しい位置にないと、他の歯が無理をして頑張ろうとするため、結果的に歯全体に負担がかかってしまうんです。

※犬歯誘導とは、顎を左右に動かすときに犬歯が中心となって、他の歯を守る仕組みのことです。たとえば、ガムを噛むときのように顎を横に動かすと、動かした方向の上下の犬歯同士がぶつかり合い、その他の歯は自然に離れるようになっています。

【早期に治療すべきケース】

食事の時に明らかに不便さを感じる場合や、特定の歯だけ痛みを感じるような場合は、早めに治療を始めた方が良いでしょう。犬歯がうまく働かない状態が続くと、他の歯に大きく負担がかかるため、結果的に歯の寿命を縮める可能性があるからです。

虫歯や歯周病になりやすい

八重歯の一番の困りごとといえば、歯磨きの大変さかもしれません。歯が重なっていると、どうしても歯ブラシやフロスが届かない部分ができてしまいます。

放置していると、

  • 停滞した汚れが細菌の温床となる
  • 疾患が進行して治療期間と費用が増える

八重歯の方は虫歯になりやすい傾向があります。特に犬歯の周りは歯ブラシが当たりにくく、知らないうちに虫歯が進行していることも少なくありません。毎日しっかり歯磨きをしているつもりでも、構造上どうしても限界があるのが現実です。

【早期に治療すべきケース】

八重歯の周りの歯肉から血が出たり、口臭が頻繁に気になるようになった場合は、すでに歯周病が進んでいる可能性があります。歯周病は進行すると歯を支えている骨まで溶かしてしまうので、早めに治療を始めることが大切です。

また、虫歯が定期的にできるようになった場合も、歯磨きがしにくい環境が根本的な原因になっているため、歯並びを改善することで解決可能なことが多いです。

噛み合わせが乱れやすい

八重歯があると、上下の歯がきちんと噛み合わなくなることがあり、これは見た目以上に深刻な問題を引き起こすおそれがあります。

例を挙げると、

  • 顎の関節に余計な負担がかかり続ける
  • 噛むための筋肉のバランスが崩れてしまう
  • 頭や首、肩の筋肉が緊張して痛むことがある

当院でも「原因のわからない頭痛や肩こりに悩んでいる」という患者さんが、八重歯の治療後に症状が改善されるケースを見かけます。噛み合わせのバランスが崩れると、その影響は意外なところまで及ぶことがあるんです。

【早期に治療すべきケース】

顎に痛みや違和感がある場合、頭痛や肩こりが続く場合は、噛み合わせの問題が全身に影響している可能性があります。これらの症状は時間がたつにつれて悪化することが多く、治療が遅れるほど改善にも時間がかかってしまいます。

歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合も、噛み合わせを良くすることで症状の軽減が期待できるので、早めに相談してみることをおすすめします。

唇や口の中を傷つけやすい

八重歯でよく聞く悩みが「同じ場所に口内炎ができる」「食事中に頬を噛んでしまう」などです。これは偶然ではなく、八重歯が原因で起こることがあります。

放置していると、

  • 唇や頬、舌を傷つけてしまう
  • 傷口から細菌が入りやすくなる
  • 事故や転倒時に大怪我をしやすい

通常、犬歯は唇の内側に自然にフィットするように生えているのですが、八重歯の場合は常に当たってしまう状態になります。話す度に唇が擦れたりなど、日常生活での小さなストレスが積み重なってしまいます。

【早期に治療すべきケース】

口内炎が何度もできる場合や、唇・頬にいつも傷がある場合は、継続的な刺激で炎症が慢性化している状態です。これが長く続くと、傷が治りにくくなるので注意が必要です。

食事中によく頬を噛んでしまう場合も、日常生活が不便になる要因になるため、早めに改善した方が良いでしょう。

口呼吸になりやすくなる

八重歯がある場合、歯並び全体の問題により唇がきちんと閉じにくくなり、その結果として無意識のうちに口が開いて口呼吸になることがあります。

口呼吸になることで、

  • 口の中が乾きやすくなる
  • 口臭を引き起こしやすくなる

私の患者さんでも「朝起きると口の中がカラカラ」「いつの間にか口が開いている」という方がいらっしゃいます。口呼吸になると、口の中が乾燥して細菌が繁殖しやすくなるため要注意です。

【早期に治療すべきケース】

口の中が度々乾いている場合や、周囲の人に口臭を指摘される場合は、口呼吸によって口腔内環境が悪くなっていることが考えられます。その結果、虫歯や歯周病になりやすいことも1つです。

また、風邪をひきやすくなった場合も口呼吸の影響が考えられます。口呼吸では鼻の粘膜によるフィルター機能が働かず、ウイルスや細菌が直接体内に侵入しやすくなるためです。このような場合は、早めに歯並びを改善して鼻呼吸に戻すことが大切です。

コンプレックスによるストレス

これは見た目の問題ですが、決して軽く考えてはいけません。八重歯がコンプレックスになって、日常生活に影響が出ている方も実際に多いんです。

たとえば、

  • 会話や笑顔を心理的に抑えてしまう
  • 見た目への不満で自信が持てなくなる

当院に来られる患者さんの中にも「人と近い距離で話せない」「笑って写真を撮るのが嫌」という方が多くいらっしゃいます。歯並びのせいで本来の魅力を表現できないのは、とてももったいないことです。

【早期に治療すべきケース】

会話の度に抵抗を感じる場合や、歯並びが原因で消極的になっている場合は、精神的なストレスが日常生活に影響している状態です。コンプレックスは時間が経つにつれて深刻になることが多く、社会生活や人間関係にも悪影響を与えてしまいます。

その他、将来の結婚や転職などに向けて口元を整えたい場合、治療にかかる期間を考えると、早めにスタートすることが重要です。

以上、八重歯を放置することで起こりうる6つのリスクについてお話ししました。「八重歯ぐらい大丈夫」と思われがちですが、実は様々な問題につながる可能性があることがおわかりいただけたでしょうか。

早期の治療により、これらの問題のほとんどは解決できるため、気になる症状がある方はぜひ専門医にご相談ください。

八重歯になった犬歯は矯正治療がおすすめ

八重歯を根本的に治すには、やはり矯正治療がおすすめの方法です。「矯正って大変そう…」と思われる方も多いのですが、最近の矯正技術はとても進歩していて、患者さんの生活スタイルに合わせた治療ができます。

主な治療方法として、ワイヤー矯正とマウスピース矯正です。それぞれに良いところと注意点があるので、八重歯の状態や普段の生活を考えて、最適な方法を選ぶことが大切です。

  • 【ワイヤー矯正】
    ワイヤー矯正は、歯にブラケットという小さな装置をつけて、そこにワイヤーを通して歯を動かす方法です。昔からある治療法ですが、今でも効果的かつ主力の矯正方法として世界中で使われています。
  • 【マウスピース矯正】
    マウスピース矯正は、透明なマウスピース型の装置をつけて歯を動かす治療法です。ただし、すべての八重歯の症例に対応できるわけではないので要注意です。

ワイヤー矯正VSマウスピース矯正

項目ワイヤー矯正マウスピース矯正
見た目装置が見える
(表側矯正の場合)
目立たない
治療可能な症例軽度~重度まで軽度~中程度
コントロール力高い限界あり
(症例による)
自己管理不要常に必要

八重歯になった犬歯の治療において、マウスピース矯正は軽度から中程度の場合には適していますが、重度や複雑な症例では対応が困難なことが多いです。特に歯の重なりが大きい場合や歯列から大きく外れている場合、やはりワイヤー矯正でないと根本的な解決は難しいといえます。

とはいえ、ワイヤー矯正で一番気になるのが「見た目」の問題ですよね。そこで私がおすすめしたいのが「裏側矯正」です。裏側矯正なら、十分な治療効果を得ながら、見た目をほとんど気にする必要がありません。

八重歯に裏側矯正を選ぶメリット

裏側矯正は、歯の裏側にブラケットやワイヤーをつけて矯正する治療法です。私が長年専門的に取り組んできた分野で、八重歯の治療には理想的な選択肢の1つであると考えています。

見た目への配慮

  • 矯正していることがほとんどわからない
  • 接客業や営業職でも問題なく治療できる
  • 冠婚葬祭や重要なイベントでも心配いらない

治療効果の高さ

  • 軽度から重度の八重歯でも対応できる
  • 噛み合わせや舌の癖も同時に改善できる
  • 根本的な改善により治療後の安定性が高い

当院では、患者さんの八重歯の状態や生活環境を詳しくお聞きした上で、最適な治療プランをご提案しています。特に女性の方から「見た目を気にせず治療できて本当に良かった!」という感想をよくいただきます。

裏側矯正による八重歯治療の症例

実際の治療例をご紹介しますね。下記の患者さんは、八重歯とガタガタ歯の矯正で来院されました。

治療前

治療を始める前の状態です。歯列から外側に飛び出していて、典型的な八重歯の状態でした。

治療後

治療完了時の状態です。2年6ヶ月の治療期間で、本当に美しい歯並びになりました。

この症例のように、裏側矯正では治療中の見た目を全く心配することなく、しっかりと八重歯を改善することができます。

当院では、1人ひとりに満足していただける治療結果を多数実現しており、患者さんの人生がより豊かになるお手伝いができることを本当に嬉しく思っています。八重歯でお悩みの方は、ぜひご相談くださいね。

まとめ|八重歯の悩みは矯正専門医で解決を

八重歯の悩みを 1人で抱え込んでいる方にとって、治療に踏み切るかどうかは大きな選択かもしれません。

「毎日、鏡の前で気になっている」
「将来を考えると今のうちに治したい」

そんな気持ちを持たれている方も多いでしょう。

私が25年以上多くの患者さんと向き合ってきて確信していることは、八重歯は単なる見た目の問題だけに止まらないことです。記事中で解説した6つのリスクの影響も含めて考えると、やはり適切な治療による改善が望ましいと考えています。

ただし、治療期間や費用のことを考えると、決して軽い気持ちで始められるものではありません。だからこそ、信頼できる矯正専門医のもとで診断、治療を受けることが何より重要です。

当院では、患者さんの生活スタイルや将来の予定も含めて、総合的に判断した治療計画をご提案しています。八重歯について「もう少し様子を見てから…」と迷われている方も、まずは専門医に相談してみませんか。詳細な診断を受けることで、きっと方向性が見えてくるはずです。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。あなたらしい美しい笑顔を手に入れて、これからの人生をより充実したものにしていただきたい。そのお手伝いができればとても嬉しいです。

執筆・編集:竹田 彰

大宮の裏側矯正専門セレーノ矯正歯科の院長、竹田です。25年以上にわたって裏側矯正を専門に治療してきました。歯並びを整えることはもちろんですが、それ以上に、顔全体のバランスを美しく保ちながら、自然な笑顔を引き出すことを信念にしています。

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About

大宮の裏側矯正専門セレーノ矯正歯科は、口ごぼ、出っ歯、すきっ歯など歯並びでお悩みの方のための目立たない歯列矯正を行っています。歯並びや噛み合わせだけではなく、健康的で美しい笑顔を目指しています。すべての調整はキャリア25年以上の院長が担当しますので、ご安心ください。歯を見せて思い切り笑顔になれる人生を選択しませんか?