「ディープバイトって矯正で治せるの?」
「笑った時に歯茎が見えすぎて気になる…」
「口元がずっとコンプレックスでもう嫌…」
噛み合わせの深さに悩みを抱えている方は、思っている以上に多くいらっしゃいます。あなたも鏡を見る度に気になっていませんか。
私は矯正歯科医として、25年以上も歯のお悩みに向き合ってきました。ディープバイト(過蓋咬合)は単なる見た目の問題ではなく、将来的な健康リスクも含む重要な症状のため、決して甘く見てはいけません。
この記事では、ディープバイトの矯正に向けて知っておくべき情報を、歯科医師の立場から正直にお話しします。口元のコンプレックスから解放され、安心して笑える日々を手に入れたい方のお役に立てるよう、全力でお伝えしていきます!
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Toggleディープバイトとは?矯正による治し方

ディープバイト(過蓋咬合)とは、上の前歯が下の前歯を過度に覆い隠してしまう噛み合わせの問題です。「下の歯がほとんど見えない」「上の歯茎が目立って見える」といった悩みを抱えている方も多いと思います。
私が25年以上のキャリアの中で、ディープバイト矯正に携わってきた経験からいうと、適切な歯列矯正により症状の改善が十分に期待できます。むしろ、放置することで深刻な問題を招く恐れがあるため、早期の矯正治療をおすすめしています。
ディープバイトってどんな状態?
正常な噛み合わせは、上の前歯が下の前歯を2~3mm覆う程度です。しかし、ディープバイトではその数値が大きく異なります。

重症度 | 覆う深さの目安 | 見た目の特徴 |
---|---|---|
軽度 | 4~5mm | 下の歯があまり見えない |
中度 | 6~7mm | 下の歯がほぼ見えない |
重度 | 8mm以上 | 下の歯が上の歯茎に当たる |
最重度 | 歯茎への食い込みあり | 下の歯が上の歯茎に食い込む |
あなたの症状はどの段階に当てはまりますか?鏡で口元の状態を確認してみると、その深刻さがより実感できるかもしれません。
歯列矯正でどう治すの?
ディープバイト矯正では、単に歯を動かすだけでなく、噛み合わせ全体のバランスを整えることが重要です。治療方法は患者さんの症状や原因によって大きく異なりますが、参考例としてアプローチを1つご紹介します。
【参考例:矯正治療のアプローチ】
- 前歯の位置調整:上下の前歯の角度や位置を修正する
- 奥歯の高さ確保:全体の噛み合わせバランスを整える
- 顎の位置改善:下顎を理想的な位置へ誘導する
- 悪習癖の改善:舌の位置や呼吸法などの原因を修正する
私が特に重視しているのは、なぜディープバイトになったのかという根本原因の詳しい調査です。表面的な症状だけでなく、普段の舌の位置や呼吸の癖、食事での噛み方なども含めて総合的に分析しています。
根本的な原因を見つけ出さないまま治療を始めると、思うような改善が見られなかったり、せっかく矯正しても後戻りのリスクがあるためです。
自費診療?保険適用はできるの?
多くの方が気になる保険適用についてですが、ディープバイト矯正は原則として「自費診療」となります。ただし、一部の条件を満たす場合には保険適用が認められることもあります。
条件 | 保険適用 |
---|---|
外科手術を伴う重度の顎変形症 | ○ |
一般的なディープバイト | × |
保険適用となる症例は限定的です。多くのディープバイトは外科手術なしの矯正で改善が見込めるため、結果的に身体への負担が少ない治療となるケースが多いのです。
以上、ディープバイトの矯正による治し方について解説しました。次に、この症状が横顔や正面顔にどのような影響を与えるのか、具体的に見ていきましょう。
ディープバイト矯正が見た目に与える変化

ここでは、ディープバイトの矯正が「見た目」に与える変化について、正直にお話しします。ディープバイト単独では、限定的な変化にとどまる部分もあるため、矯正前に現実的な情報を理解することが大切です。
ガミースマイルの改善
見た目において改善が期待できるのが、笑った時に上の歯茎が過度に見える「ガミースマイル」です。
ディープバイトでは上の前歯の位置に問題があったり、前歯が適正な長さより伸びて生えていることが多く、これがガミースマイルの主な原因の1つになっているからです。
矯正により上の前歯の位置を適切に調整することで、歯茎の露出量を減らし、バランスの良い笑顔を作ることが可能です。当院でも多くの方がガミースマイルの改善を実感されています。
その他、見た目の変化について
ディープバイト矯正単独の場合、横顔や正面の顔つきは基本的に変化しませんが、他の症状と組み合わさっている場合は状況が異なります。
- ディープバイト + 上顎前突(じょうがくぜんとつ)
- ディープバイト + 反対咬合(はんたいこうごう)
- ディープバイト + 叢生(そうせい)
これらの複合症例において、治療への協力度が高い方ほど顔のバランス改善が見込めます。私の経験でも、患者さんがしっかりと治療に取り組まれた場合、横顔を含めた見た目の変化を実感される傾向があります。
※上顎前突とは、上の前歯や上顎全体が前方に突出している状態で、一般的に「出っ歯」と呼ばれる症状。
※反対咬合とは、下の前歯が上の前歯より前に出ている噛み合わせで、一般的に「受け口」と呼ばれる症状。
※叢生とは、歯が重なり合ったりねじれて生えている状態で、いわゆる「ガタガタの歯並び」のこと。
以上のように、ディープバイト矯正では改善が期待できる見た目と、症状の組み合わせによって変化する部分があります。インターネット上には様々な情報がありますが、歯科医師の正確な診断があってこそ、あなたに期待できる結果をお伝えできます。
ディープバイト(過蓋咬合)の原因6つ

ディープバイト(過蓋咬合)の原因は1つではありません。骨格的な要因から日常の小さな癖まで、様々な原因が絡み合って症状が現れることが多いです。
効果的な矯正を行うためには、まずこれらの根本的な原因を正確に把握することが重要です。早速、主なものを6つ解説します。
原因① 上下の顎の成長バランスの乱れ
成長期における上顎と下顎の発育のバランスが崩れることで、ディープバイトが生じる場合があります。上顎が過剰に成長したり、逆に下顎の成長が十分でなかったりすると、上下の歯の重なりが深くなってしまいます。
顎の状態 | ディープバイトへの影響 |
---|---|
上顎の過成長 | 上の歯が下の歯を覆いやすくなる |
下顎の成長不足 | 下の歯の位置が後退する |
また、上顎が前方に位置し過ぎていたり、下顎が後方に下がり過ぎている場合も、噛み合わせのバランスが崩れて症状が起きやすくなります。
原因② 歯の生える位置や角度の問題
歯そのものの生え方や角度に問題があると、ディープバイトが現れやすくなります。上の前歯が前方に過度に傾斜していると、下の前歯との重なりが深くなってしまいます。逆に、下の前歯が後方に傾いている場合も同様の問題が生じます。
また、幼少期に虫歯で乳歯を早く失うと、後から生えてくる永久歯の道筋が変わってしまうことがあります。乳歯は永久歯のガイド役を果たしているため、このタイミングがずれると歯の位置異常を招き、結果的にディープバイトの原因にもなります。
原因③ 歯ぎしりや頬杖など癖による変化
日常生活の中で無意識に行っている癖や習慣が、長期間続くことでディープバイトになることがあります。
癖・習慣 | ディープバイトへの影響 |
---|---|
歯ぎしり・食いしばり | 奥歯のすり減りで噛み合わせが深くなる |
頬杖をつく | 顎に一方向の圧力をかけ続けてしまう |
指しゃぶり | 前歯に継続的な力がかかり位置を変化させる |
下唇を噛む・吸う | 前歯の位置関係に悪影響を及ぼす |
当院では、歯列矯正と並行してこれらの悪習癖の改善指導も重視しています。習慣を見直さないと治療後の後戻りリスクがあるためです。
原因④ 奥歯の高さが不足している
奥歯の高さが十分でないと、前歯の噛み合わせが深くなってしまいます。奥歯が十分に伸びていない場合や、虫歯の治療などで歯が低くなった場合、噛み合わせの高さが不足してディープバイトを招くことがあります。
特に問題となるのは、奥歯を虫歯で早期に失ったり、抜歯したまま長期間放置する場合です。奥歯がないと噛み合わせの支えがなくなり、前歯に多くの負担がかかってしまいます。この状態が続くと、前歯の重なりがどんどん深くなってしまうでしょう。
原因⑤ 口呼吸に伴う影響
鼻呼吸ができずに口呼吸が続くと、舌の位置が本来あるべき場所より下がることがあります。通常、舌は上顎に軽く触れている状態が理想的ですが、舌が下がることで上顎への適切な圧力が不足し、上顎の発育が制限されます。
同時に、下顎も正しい位置より後退しやすくなり、上下の前歯の重なりが深くなってディープバイトを引き起こすのです。
私が診察する際は、呼吸の状態も必ずチェックしています。鼻呼吸がしっかりできているかどうかで、治療計画も変わってくるからです。
原因⑥ 遺伝的要因による骨格の特徴
生まれ持った骨格の特徴によるディープバイトの方も多いです。骨格的に上顎が下顎よりも前方に位置していたり、下顎が小さかったりする場合に現れやすくなります。
顔面の成長パターンや歯の大きさ・形なども遺伝的な要素が関わってくるため、ご両親のどちらかに同様の症状がある場合は注意が必要です。
ただし、遺伝的要因があっても、適切な時期に歯列矯正を行うことで十分に改善が期待できます。
以上、ディープバイトの主な6つの原因について解説しました。実際の矯正治療では、これらを総合的に分析し、一人ひとりに最適なアプローチを選択していきます。
早めにディープバイトを矯正すべき理由

ディープバイト(過蓋咬合)は見た目だけでなく、口腔内の健康にも深刻な影響を与える症状です。「今は特に困っていないから…」と治療を先延ばしにする方も多いのですが、実は時間が経つほど問題は進行していきます。
私が25年間以上多くの患者さんを診てきた経験からも、早期の矯正治療をおすすめする理由はたくさんあります。ここではその理由を5つ解説します。
虫歯や歯周病のリスクを防ぐため
ディープバイトでは上下の前歯が深く重なり合うため、歯ブラシが届きにくい部分ができます。この状態では、口腔内を常に清潔にできず、細菌が繁殖しやすい環境を作ってしまいます。
【清掃困難な部位と問題】
- 上下の前歯の重なり部分:歯垢が蓄積しやすい
- 歯の裏側:ブラシが当たりにくい
- 歯間部:フロスが入りにくい
当院では口腔ケア指導も徹底していますが、根本的な解決には早期に歯並びを整えることが最も効果的です。
歯の異常な摩耗を防ぐため
ディープバイトの状態では、上下の前歯がズレていて、奥歯ばかりが常に強く接触し続けるため、奥歯が削れるリスクが高くなります。表面のエナメル質は人体で最も硬い組織として歯を保護していますが、持続的な圧力により少しずつ摩耗してしまいます。
摩耗が進むと知覚過敏を引き起こし、さらに進行すると歯の内部の象牙質が露出して、虫歯になりやすくなったり、より強い痛みを感じるようになります。
また、歯が短くなれば、噛み合わせがさらに深くなる悪循環も生じるでしょう。
※象牙質とは、歯の表面のエナメル質の内側にあり、歯の大部分を占める組織のこと。
歯茎へのダメージを防ぐため
過度に深い噛み合わせは、歯茎にも大きな影響を与え続けます。特に下の前歯が上の歯茎に当たることで、炎症や腫れを引き起こしやすくなります。
私の診察では、ディープバイトの患者さんの多くに歯茎の問題が見つかります。長期間この状態を放置すると、歯茎の退縮や歯槽骨の減少といった、より深刻な問題につながる場合もあるでしょう。
一度失われた歯茎や骨は完全には元に戻りにくいため、早めの矯正が重要です。
※歯槽骨とは、歯の根を直接支えている顎の骨の部分で、歯を口の中に固定する役割を果たす。
顎関節症のリスクを軽減するため
ディープバイトは顎の関節にも過度な圧迫を与えるため、顎関節症のリスクが高まります。
- 口が大きく開けられなくなる
- 顎がこわばって動かすときに痛む
- 口を開けるときに音が鳴る(カクカク、ポキポキ)
さらに、顎関節の不調は頭痛や肩こり、首の痛みなど、全身の不調にもつながることがあります。矯正により正しい噛み合わせに改善することで、これらの症状の軽減が大きく期待できます。
噛み合わせや歯並びの悪化を防ぐため
ディープバイトを放置すると、他の歯にも徐々に影響が広がります。前歯に過度な力がかかることで、奥歯の位置関係も変化し、歯並び全体がさらに乱れる恐れがあります。
症状が複雑になればなるほど、矯正の期間も長くなり、費用も高額になってしまいます。できるだけ軽度な段階で矯正を開始することが、結果的に患者さんの時間的・経済的な節約につながるでしょう。
以上、早めにディープバイトを矯正すべき理由を5つ解説しました。これらの理由から、早期に治療することで健康面でも大きなメリットが得られる症状といえます。
現時点で気になる症状がある方は、矯正専門の歯科医院に相談してみることをおすすめします。
3つのディープバイト矯正どれがいい?

ディープバイト矯正には主に3つの選択肢があります。「裏側矯正・表側矯正・マウスピース矯正」それぞれに特徴があり、どれを選ぶかで治療中の生活や仕上がりに影響があります。
私が長年様々な症例を手がけてきた中で、特にディープバイトの場合は「矯正方法の選択が成功のカギを握る」と強く感じています。
【比較表】3つの主な矯正方法
項目 | 裏側矯正 | 表側矯正 | マウスピース矯正 |
---|---|---|---|
見た目 | ◎ ほぼ見えない | × とても目立つ | ○ 目立ちにくい |
対応範囲 | ◎ 軽度~重度 | ◎ 軽度~重度 | △ 軽度~中度 |
前歯の圧下 | ◎ 十分できる | ◎ 十分できる | △~✕ 限界あり |
違和感 | △ 初期はあり | △ 初期はあり | △ 初期はあり |
自己管理 | ○ 不要 ※清潔に保つ | ○ 不要 ※清潔に保つ | △ 必要 ※装着時間の厳守 |
紛失リスク | ◎ なし | ◎ なし | △ あり |
まず、真ん中の「表側矯正」は費用対効果に優れているため、仕事や人前での見た目を気にしなければ有効な選択肢になります。
次に「マウスピース矯正」は取り外しが可能で、日常生活への影響を比較的抑えられます。ただし、ディープバイトの治療ではワイヤー矯正に比べて断然不利になります。
ディープバイトは前歯を圧下させ(骨に押し込む)、前歯の重なりを正す必要がありますが、マウスピース矯正は前歯の圧下が大の苦手だからです。
※前歯の圧下は高い技術が必要となり、全ての矯正医ができるものではありません。
また、取り外しできる便利さが、かえって装着忘れや「今日1日だけ外したいな」というサボりの原因となり、治療期間の延長や希望の結果が得られないリスクも考えられます。
患者さんの装着努力に結果が大きく左右されるため、安定性の面での課題もあるでしょう。
ディープバイトには裏側矯正がおすすめ
私がディープバイト治療で裏側矯正をおすすめする理由は「審美性と矯正力の両方を兼ね備えている」からです。
裏側矯正では装置がほぼ見えないため、治療中も人前で自然に笑ったり話したりできます。さらに、ディープバイトの根本原因にしっかりアプローチできる矯正力があり、治療後の仕上がりもナチュラルで美しく、表側矯正のように歯の表面を傷つける心配もありません。
当院では裏側矯正専門として、ディープバイトの症例を数多く手がけてきました。20~30代の患者さんからは、治療中に下記のような喜びの声をよくいただきます。
「職場でも全く気づかれませんでした」
「治療中も自然な笑顔で過ごせました」
「仕事でお客様と自然に会話できました」
「彼氏との食事で口元を隠さず済みました」
「プレゼンする時も自信を持って話せました」
ディープバイト矯正では治療期間が長くなることも多いため、その間ずっと金属の装置が見えてしまうのは精神的な負担になります。その点、裏側矯正なら周囲の視線を気にしなくていいので、口元を意識せずに自然体で過ごせます。
すでに解説したように、ディープバイトは放置すると顎関節症や歯の摩耗などのリスクが高まるため、早めに矯正を始めることが大切です。その際、見た目も機能も妥協せず、あなたらしい自然な歯並びを目指せる方法を選んでほしいと思います。
まとめ:ディープバイト矯正で美しく健康に

「私の場合も改善できるのかな?」そんな疑問を抱きながら、この記事を読み進めてくださったのではないでしょうか。
ディープバイトは多くの方が諦めがちな悩みですが、適切な矯正により大きく改善が期待できる症状です。口元のコンプレックスを感じたり、人前で笑うことをためらう日々から、きっと解放されるはずです。
もちろん、矯正への第一歩には勇気が必要になります。「時間がかかりそう」「治療費が心配」「周囲にバレないか不安」といった気持ちは当然のことです。
当院では、治療の質を最優先に考え、最も美しい結果を目指せる矯正プランをご提案しています。「今の自分を変えたい」そう思った瞬間が、あなたのスタートラインです。今まで隠したいと思っていた口元が、自慢したくなる美しさに変わるかもしれません。
ディープバイトの矯正を通して、あなたらしい美しさを引き出すお手伝いができれば、これほど嬉しいことはありません。理想の口元を手に入れ、今よりも前向きに過ごせる毎日を一緒に目指してみませんか。