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裏側矯正中の舌の位置が仕上がりの美しさを左右する理由

「裏側矯正を始めたら、舌がいつも装置に当たって違和感がある」
「しゃべりにくくて、なんとなくストレス…」
「舌の位置って、正直どこが“正解”なの?」

裏側矯正(舌側矯正)を始めた方の中には、こうした悩みや疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。

装置が見えにくいという大きなメリットがある一方で、「舌の位置」が重要なカギを握っていることは、あまり知られていません。実は、裏側矯正中の舌の使い方やクセが、治療の仕上がりの美しさや安定性を大きく左右するのです。

私は、25年以上にわたり矯正治療に携わり、裏側矯正を専門に診てきました。その中で、「正しい舌の位置が治療結果に与える影響」は想像以上に大きいことを実感しています。

この記事では、裏側矯正中に「舌の位置」がなぜ大切なのか、間違った位置がどんな影響を及ぼすのか、そして美しい仕上がりのために今すぐできるポイントまで、専門的な視点からわかりやすく解説していきます。

裏側矯正中に「舌が当たって気になる」「後戻りしないか心配」という方は、ぜひ最後まで読んでみてください。あなたの矯正治療が、より美しく、より快適なものになるお手伝いができれば嬉しいです。

裏側矯正中によくある「舌の悩み」

裏側矯正中によくある「舌の悩み」

裏側矯正を始めた方が、治療初期にとくに感じやすいのが「舌の違和感」です。舌側に装置があることで、今まで意識していなかった“舌の存在”が一気に気になってしまう…そんな声をよく聞きます。

ここでは、裏側矯正中によく寄せられる舌の悩みについて整理してみましょう。

舌がブラケットに当たって痛い

裏側矯正では、装置(ブラケットやワイヤー)が舌に近い位置にあるため、舌がこすれて痛みを感じることがあります。特に、装置をつけて間もない時期は、舌の先や側面が赤くなったり、口内炎ができてしまったりするケースもあるので注意が必要です。

これは誰にでも起こりうることなので、まずは「慣れの過程」と捉えてOK。ただし、痛みを感じるのは舌がそもそも正しい位置にないケースが大半なので、トレーニングをして改善するべきです。なお、あまりに痛みが強い場合は、担当の先生に相談し、保護ワックスを使うなど緩和することもできます。

舌が動かしにくい、しゃべりにくい

「話していると、舌が引っかかって滑舌が悪くなる」「舌が自由に動かせない感じがする」――こうした違和感も、裏側矯正特有の悩みのひとつです。

特に、“サ行・タ行・ラ行”といった舌を使う発音は、舌が装置にぶつかることで発音しにくくなることがあります。ただし、ほとんどのケースで1週間~2週間ほどで自然に慣れ、スムーズに発音できるようになっていきます。

滑舌に不安がある方は、声を出す練習を日常的に取り入れるのがおすすめです。アナウンサーのように、鏡を見ながら口や舌の動きを確認するだけでも、かなり違いが出ますよ。

舌がどこにあるべきかわからない

「気づくと、舌がどこに置いていいのかわからない…」という声もよく聞かれます。裏側に装置があることで、舌の“定位置”が見失われやすくなるんですね。

本来、舌は上あごの内側、前歯のすぐ後ろの“スポット”と呼ばれる場所に軽くついているのが理想的なポジションです。ところが、装置があることでそのポジションを避けてしまい、下の前歯を押すような位置に舌が動いてしまう人もいます。

この状態が続くと、歯並びに悪影響が出ることもあるため、後ほど詳しくお伝えする「正しい舌の位置」を意識することがとても大切になります。

発音や滑舌への影響

人前で話す機会が多い方や、お仕事で電話対応・接客をされている方にとっては、「話しにくさ」や「滑舌の悪さ」は大きなストレスになりますよね。

たしかに、矯正初期は発音がもたつくことがありますが、多くの方は慣れていく過程で自然に改善していきます。大切なのは、「間違った舌の使い方」をそのままクセにしてしまわないこと。

発音や舌の位置に違和感がある時期こそ、正しい舌の動かし方を身につけるチャンスでもあるんです。

正しい舌の位置とは?

正しい舌の位置

裏側矯正中は、装置の存在によって「舌の居場所が分からない」という悩みがつきものです。でも、実はこの“舌のポジション”こそが、矯正治療の仕上がりやその後の安定性に大きく関わっていることをご存知でしょうか?

舌が本来あるべき場所、そしてその役割について、ここでしっかり確認しておきましょう。

舌の“正しい位置”は上あごのスポットに収まるべき

本来、舌の理想的な位置は、上あごの前方にある「スポット」と呼ばれる場所です。上の前歯のすぐ後ろ、少しだけ窪んだ部分に舌の先が軽く触れている状態がベストポジション。

さらに、舌全体は上あごにぴったり沿うような感覚で、舌の側面や奥の方も上あごについているのが理想的です。

矯正を始める前はあまり意識しなかったかもしれませんが、この“正しい位置”に舌を置けているかどうかが、歯並びや噛み合わせ、さらには顔の印象にまで影響してくるんです。

正しい舌の位置が与える3つの良い影響

舌が正しい位置にあることの3つのメリットをお伝えしましょう。

歯列が安定する

舌が本来の位置にあると、内側から適度な力がかかり、歯並びのアーチが整いやすくなります。反対に、舌が低い位置や前方にあるクセがあると、歯が押し出されて出っ歯になったり、噛み合わせが崩れてしまうこともあります。

矯正治療中に正しい舌の位置を意識することで、仕上がりが美しくなるだけでなく、治療後の「後戻り」を防ぐ効果も期待できます。

噛み合わせが調和する

舌は、ただ話したり飲み込んだりするだけでなく、上下の顎や筋肉のバランスを保つ役割も担っています。舌が正しい位置にあることで、上下の歯が自然な位置で噛み合いやすくなり、顎の動きもスムーズになるのですね。

矯正後に「噛みにくい」「顎が疲れる」と感じる人の多くは、舌の位置や動きに問題があることが多いんです。

顔の筋肉のバランスが整う

舌の位置は、実はお顔全体の印象にも影響を与えます。舌が低い位置にあると、口が開きがちになったり、口元の筋肉がたるみやすくなる傾向があります。

反対に、舌が正しい位置にあると、自然と口が閉じやすくなり、口元やフェイスラインが引き締まって見える効果さえあります。「矯正で歯並びがきれいになったのに、なんとなく顔の印象がすっきりしない」という人は、舌の位置や使い方を見直してみると良いかもしれません。

舌の位置が悪いと起こるトラブル

舌の位置が悪久手、前歯が押し出されてしまった女性

裏側矯正を進めるうえで、歯の動きや仕上がりに大きな影響を与えるのが「舌の位置」。正しいポジションを意識できていないと、実は様々なトラブルを引き起こしてしまう可能性があります。

見た目だけでなく、機能面でも思わぬ影響があるため、この機会にぜひチェックしてみてください。

前歯が押し出される(舌癖)

もっともよくあるのが、舌で前歯を押してしまう「舌癖」です。

無意識に舌先が下がっていたり、前方に出ていたりする状態が続くと、前歯にじわじわと力がかかり、せっかく整えた歯が前に出てしまうことがあります。特に裏側矯正は、装置が内側にあるため、舌が触れやすく、癖が出やすい傾向にあるといえるかもしれません。

「前歯だけが治療後に戻ってきた気がする…」という声の多くは、こうした舌のクセによるものなのです。

発音・見た目・噛み合わせへの影響

舌の位置が安定していないと、発音や滑舌が悪くなることがあります。特に「サ行」「タ行」「ラ行」などは舌の動きが大きく関係しているため、発音が不明瞭になったり、しゃべりにくさを感じたりすることもあるので要注意。

さらに、口元がぽかんと開きやすくなったり、顔の筋肉がうまく使えずに見た目のバランスが崩れることもあります。

また、舌の力が均等に働かないと、噛み合わせにもアンバランスが生じやすくなります。「噛みにくい」「どこで噛んでいるか分からない」と感じる場合も、舌の位置が影響しているケースがあります。

後戻りのリスクが高まる

矯正治療で整えた歯並びが、数年後に戻ってしまう「後戻り」。その大きな原因のひとつが、舌の使い方にあることをご存知でしょうか?

正しいリテーナー(保定装置)を使っていても、舌癖が残っていると、じわじわと歯に負担がかかり、元の状態に引き戻す力が働いてしまうのです。

特に、前歯を押すクセが残っている人は、矯正後に前歯の位置が安定せず、またすき間が空いてしまったり、軽い出っ歯のような形に戻ってしまうこともあるので注意してください。

治療計画通りに歯が動かない

裏側矯正では、歯を内側から正確に動かすため、歯と舌の関係性がとても重要です。もし舌が常に装置に当たっていたり、歯を押していたりすると、歯が本来の方向に動かず、予定よりも治療期間が延びてしまう可能性もありえます。

「なかなか歯が動かない」「思ったより治療が長引いている」という方は、舌の動きや癖に原因があるかもしれません。

正しい舌の使い方を身につけるには?

正しい舌の使い方を身につけるトレーニング

裏側矯正中に、美しい仕上がりを目指すうえで欠かせないのが「舌の正しい使い方」。でも、「正しい舌の位置や動きってどうすればいいの?」と疑問を抱く方も多いのではないでしょうか?

ここでは、舌の使い方を改善するための具体的な方法をご紹介します。

MFT(口腔筋機能療法)の導入

舌の癖や誤った使い方を改善する方法として、今注目されているのが MFT(口腔筋機能療法) です。

これは、舌や唇、頬などお口まわりの筋肉を正しく使えるようにトレーニングする療法で、矯正治療と組み合わせて行うことで、歯並びの安定や噛み合わせの調和をサポートしてくれます。

特に、裏側矯正は舌との距離が近く、舌癖の影響を受けやすいため、MFTを取り入れることで仕上がりが美しく、自然になるだけでなく、ファイスラインが整ったり、小顔になったりと良いことづくめです。あまり主だって言われることは少ないのですが、歯列矯正において、患者さん自身の努力、ドクターへの協力度が仕上がりの成果を左右します。

日常生活で意識したいポイント

舌のトレーニングと聞くと、特別なことが必要に感じるかもしれませんが、実は日常生活のちょっとした意識でも改善につなげることができます。

たとえば、次のような点を意識してみてください。

舌で歯を押さない

無意識に舌で前歯や下の歯を押してしまう癖があると、矯正装置の力とぶつかり合って歯が動きにくくなったり、前歯が突出してしまう原因になります。

「飲み込むときに舌が前に出ていないか」「安静時に舌先が歯に触れていないか」を確認してみましょう。

正しい舌の位置は、舌先が上あごの前方、やや窪んだ部分(スポット)に軽く触れている状態です。気づいたときに、舌がその位置にあるかチェックしてみてください。

飲み込み・話すときの舌の動きのチェック

舌は、話すときや食べ物を飲み込むときに大きく動きます。その動きが正しくないと、噛み合わせや発音に影響が出ることもあるのです。

「飲み込むときに顔がしかめ面になる」「話すときに唇や顎が大きく動いてしまう」などの症状がある場合は、舌の使い方が原因かもしれません。

意識して舌を上あごに添える、唇をリラックスさせるなど、 自然な動きができるように日々の動作を見直してみることが大切です。

必要なら専門的なトレーニングを受けることも

もし舌癖がなかなか直らない、日常的に違和感があると感じる場合は、矯正歯科やMFTに詳しい歯科医院で、専門的な指導を受けるようにしてください。

ドクターや歯科衛生士など専門家による指導では、舌の動きや筋肉の使い方をチェックし、一人ひとりに合ったトレーニングメニューを提案してくれます。動画や鏡を使って行うことも多く、意識しやすくなるため、改善のスピードも早まりますよ。

セレーノ矯正歯科医院での対応と症例紹介

セレーノ矯正歯科医院でのMFT対応

裏側矯正は見た目を気にせず治療ができるメリットがありますが、一方で「舌の位置が気になる」「装置が当たって違和感がある」といった悩みがあるのはいなめません。

当院では、そういったお悩みにもしっかり対応できるよう、舌の位置の指導やMFT(口腔筋機能療法)を積極的に取り入れています。

舌の位置指導・MFTの併用で、仕上がりに差が出る

裏側矯正の場合、舌と装置の距離が近くなるため、ちょっとした舌の癖が歯の動きに影響を与えることがあります。そこで当院では、初期の段階から舌の位置を確認し、必要に応じてMFTのトレーニングを併用しています。

舌を正しい位置(スポット)に置くクセをつけることで、歯列の安定や噛み合わせの調和がスムーズに進みやすくなるからです。

また、舌癖がある場合には、日常での意識ポイントもお伝えし、患者さん自身が「自分の舌を意識できるようになること」を大切にしています。どれだけ、ドクターが改善できたとしても、患者さん自身の悪癖が改善されなかったり、協力度が低かったりすると、双方にとって望ましい矯正結果は期待できません。

実際に改善したケースのご紹介

ある20代女性の患者さんは、裏側矯正をスタートされた当初、舌で前歯を押すクセが強く、軽度の前突(前歯の突出)が見られました。

装置の調整だけではなかなか改善しなかったため、MFTを取り入れたトレーニングをスタート。舌のポジションを意識する練習や、唇・頬の筋肉を鍛える簡単なエクササイズを取り入れた結果、数ヶ月で舌癖が改善し、前歯の位置も理想的なラインに収まりました。

患者さんの声「仕上がりもすごく自然になってびっくり」

裏側矯正は見た目が目立たないのが魅力でしたが、最初は舌が当たって話しづらさもありました。でも、先生に教えていただいたトレーニングをコツコツ続けたら、発音もしやすくなって、仕上がりもすごく自然になってびっくり。フェイスラインも整って、小顔になったと言われたので嬉しいです。

このように、舌の位置や筋肉の使い方まで意識することで、裏側矯正の仕上がりは大きく変わります。見た目だけでなく、噛みやすさ・話しやすさといった「機能面」も含めて、満足度の高い結果につながっていくのです。

まとめ|仕上がりを左右するのは「舌」も関係している

友人と楽しそうにコミュニケーションを取っている女性

裏側矯正は、目立たずに歯並びを整えられる優れた治療法ですが、見えない部分だからこそ意識しておきたいポイントがあります。それが 「舌の位置」です。

装置の裏側に舌が当たりやすくなることで、知らず知らずのうちに歯に余計な力がかかっていたり、舌癖によって治療が思うように進まなかったりするケースも少なくありません。

でも安心してください。舌の正しい使い方は、トレーニングや日々の意識で、誰でも少しずつ改善することができます。そしてその変化は、矯正の仕上がりや後戻りのリスク、さらには口元全体の印象にも大きく関わってくるのです。

見た目の美しさだけでなく、噛みやすさ・話しやすさといった「機能面」にもこだわるなら、舌の位置や筋機能への理解はとても大切な要素になります。

裏側矯正を検討中の方も、すでに始めている方も、「舌のことなんて意識してなかった」という方も、ぜひ一度ご自身の舌の位置に目を向けてみてください。もし不安なことや気になる点があれば、専門医にご相談ください。私たちも、あなたの矯正が美しく、そして快適に進むよう、全力でサポートいたします。

執筆・編集:竹田 彰

大宮の裏側矯正専門セレーノ矯正歯科の院長、竹田です。25年以上にわたって裏側矯正を専門に治療してきました。歯並びを整えることはもちろんですが、それ以上に、顔全体のバランスを美しく保ちながら、自然な笑顔を引き出すことを信念にしています。