「アンカースクリューって何？」
「骨に埋め込むって聞いて不安…」
矯正治療を検討する中で、アンカースクリューという選択肢に混乱している方も多いのではないでしょうか。「普通の矯正と何が違うの？」「なぜ必要なの？」と疑問が次々と湧いてきますよね。
納得のいく選択をするためには、その仕組みや効果、リスクを正しく理解しておくことが大切です。やはり情報収集が欠かせません。
私はこの道25年以上、現在は埼玉県で裏側矯正専門「セレーノ矯正歯科」の院長として、アンカースクリューを使うべきか、使わないべきか、数多くの症例を通じて見極めてきました。
この記事では、あなたの疑問に応えるべく、アンカースクリューがどんな役割を果たすのか、メリット・デメリットも示しながら、できるだけわかりやすく解説していきます。
後悔のない判断ができるように、正直な情報をお届けします。あなたの選択のヒントになれば幸いです。
歯科矯正用アンカースクリューの役割とは？
アンカースクリューとは、歯を効率的に動かすための「固定源」として機能する医療用器具です。
通常の矯正では歯同士を引っ張り合って動かしますが、アンカースクリューを使うことで動かしたくない歯はそのままに、目的の歯だけをピンポイントで移動できるのです。
小さなチタン合金製の一時的な固定源
アンカースクリューは、直径1.0～2.0mm、長さ4～12mm程度の小さなネジ状の器具です。想像よりもコンパクトに感じる方が多いでしょう。
顎の骨に一時的に埋め込むことで、矯正装置を引っ掛ける「動かない支点」を作り出します。チタン合金は体に優しく拒絶反応が起きにくい医療用金属のため、安心して使用できます。
通常の矯正との違いは「動かない支点」があること
ワイヤーやゴムを用いた矯正では、歯同士を引っ張り合うことで力を加えています。この方法でも歯を動かすことは十分に可能ですが、動かしたい歯だけでなく、固定源としている歯にも力が加わる特徴があります。
アンカースクリューは、地面に杭を打ち込んだように動きにくい支点を作るため、狙った歯の移動をコントロールしやすくなります。
【アンカースクリューで解決できる課題】
- 奥歯の不要な前方移動を防ぐ
- 歯の回転を最小限に抑える
- 前歯の引き込み量を正確にコントロールする
- 治療期間中の微調整がしやすくなる
治療終了後は除去するため体に残りません
アンカースクリューは永久的なものではなく、矯正治療が終わったら除去します。取り外しは短時間で完了し、痛みもほとんどありません。
除去後の小さな穴は1週間程度で自然に塞がり、傷跡が残りにくいため安心してください。あくまで治療期間中だけ活躍する「サポート役」です。
一時的に体に入れることへの不安を感じる方もいますが、適切に使用することで治療に役立てることができます。
以上、歯科矯正用アンカースクリューの役割を解説しました。
アンカースクリュー併用のメリット・デメリット
歯科矯正用アンカースクリューにおけるメリットとデメリットを解説します。両面を理解することで、あなたに合った治療方法を選択できるようになります。
まず、メリット・デメリットをまとめると以下の通りです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・矯正だけでは難しい歯の動きが可能 ・治療期間が短縮される場合がある ・抜歯を避けられる場合がある ・ガミースマイルの治療にも対応できる ・外科手術を回避できる場合がある | ・スクリュー埋入時に痛みや違和感がある ・まれに脱落や緩みが起こる可能性 ・埋入部位の炎症や感染リスクがある ・追加費用が発生する場合がある ・歯根を傷つけるリスクがある |
※効果や発生リスクには個人差があります。
アンカースクリュー併用のメリット5つ
アンカースクリューを使うことで、矯正治療の選択肢が広がります。
矯正装置だけでは時間がかかっていた動きや、諦めざるを得なかった歯並びの改善にも対応できるでしょう。
ここからは、具体的にどのようなメリットがあるのか詳しく見ていきます。
矯正だけでは難しい歯の動きが可能
アンカースクリューを使うと、歯を上方向に移動させるなど矯正装置のみでは難しかった動きが可能になります。そのほか、歯列全体を後方に移動させる際も、より強くかつ効率的に歯を動かせるようになります。
おさらいですが、骨に固定された「動かない支点」から力をかけられるからです。
当院では裏側矯正と組み合わせることで、見た目を気にせず複雑な症例にも対応しています。
治療期間が短縮される場合がある
アンカースクリューを併用することで、症例によっては治療期間が短縮される場合があります。
矯正装置は奥歯を固定源として前歯を動かしますが、アンカースクリューは骨に直接埋め込むため、より強固な固定源として機能するからです。
ただし、治療期間は骨の状態や歯の動きやすさ、症例の複雑さによって個人差があります。
矯正治療に必要な期間について詳しく知っておきたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。当院が専門に行う裏側矯正の場合で、一般的な治療期間の目安や期間に影響する要因について解説しています。
抜歯を避けられる場合がある
一般的に、歯が並ぶスペースが足りない場合は、健康な歯を抜いてスペースを確保する方法が多く実施されます。
しかし、アンカースクリューを使うことで、奥歯全体を大きく後方移動しやすいため、抜歯を避けられる場合があるのです。
もちろん、すべての症例で抜歯を回避できるわけではありません。骨格や歯の状態によっては、抜歯したほうが良い結果につながることもあります。
経験豊富な矯正歯科医による診断が必要ですが、症例によっては歯を残せる選択肢が増えました。
歯列矯正を検討する際、抜歯が必要かどうかは多くの方が気になるポイントです。どのようなケースで抜歯が必要になるのか詳しく知りたい方には、下記の記事が参考になります。
ガミースマイルの治療にも対応できる
ガミースマイルとは、笑ったときに歯茎が通常より多く見える状態のことです。気にされている方は意外と多く、人前で笑うのをためらってしまう声もよく聞きます。
通常の矯正でも前歯の圧下は可能ですが、アンカースクリューを併用することで、歯茎方向に大きな移動をさせやすいため、歯茎の見える量をより効果的に減らせる場合があります。
審美的な改善を求める方にとって、より良い選択肢の1つとなるでしょう。
外科手術を回避できる場合がある
重度の出っ歯や受け口など、これまで外科手術が必要とされていた症例の一部でも、アンカースクリューで対応できる場合があります。
外科矯正は全身麻酔での手術が必要なため、体への負担や入院期間、費用面での負担が大きいものです。
しかし、アンカースクリューを用いた矯正治療の進歩により、従来なら外科矯正が必要とされた軽度〜中等度の症例の一部で手術を避けられる選択肢も増えてきました。
ただし、骨格のずれが大きい場合は、手術を併用した治療が適している場合もあります。どの方法が適しているかは、精密な検査と診断に基づいて矯正歯科医が判断します。
アンカースクリュー併用のデメリット5つ
メリットがある一方で、アンカースクリューにはいくつかのデメリットもあります。
どんな治療にも一定のリスクはつきものです。大切なのは、それを理解した上で判断することです。
スクリュー埋入時に痛みや違和感がある
アンカースクリューを埋め込むとき、局所麻酔を使うため処置中の痛みはほとんどありません。しかし麻酔が切れた後、2～3日程度はじんわりとした鈍い痛みを感じる方もいれば、違和感程度で済む方もいます。
痛みの程度には個人差がありますが、多くの場合は痛み止めで対応できる範囲です。1週間ほど経つと違和感にも慣れて、普段の生活で気にならなくなる方がほとんどでしょう。
当院では、埋入後の経過をしっかり観察し、患者さんが安心して治療を続けられるよう十分に配慮しています。
まれに脱落や緩みが起こる可能性
アンカースクリューは、脱落や緩みが起こる可能性もゼロではありません。
脱落する主な原因としては、骨の密度が低い、埋入した部位に過度な力がかかる、周囲の炎症などが挙げられます。特に骨が柔らかい方や、歯ぎしりの癖がある方は注意が必要です。
もし脱落してしまった場合でも、別の位置に再埋入したり、治療計画を調整することで対応できます。過度に心配する必要はありません。
埋入部位の炎症や感染リスクがある
口の中に金属製の器具を入れるため、埋入部位に炎症や感染が起こるリスクがあります。特に、アンカースクリュー周辺に食べかすや歯垢が溜まると、細菌が繁殖しやすくなります。
炎症の初期症状としては、埋入部位の腫れ、痛み、軽い出血などが見られます。こうした症状に気づいたら、早めに対処することが大切です。
ただし、適切な口腔ケアを続けていれば、炎症や感染のリスクは減らせます。歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを使って丁寧に清掃することがポイントです。
毎日のケアをしっかり行うことが、アンカースクリューを安全に使用するために重要です。歯列矯正では、患者さんの努力が治療の成功を大きく左右します。
追加費用が発生する場合がある
アンカースクリューは使用すると追加費用が発生する場合があります。一般的には1本あたり2～5万円程度が目安ですが、矯正歯科によって料金設定には幅があります。（保険適用外）
複数本を使用する場合は、それだけ費用も増えることになります。矯正治療自体が安くはないため、追加の出費は気になるところですね。
ただし、費用だけで判断するのではなく、期待される効果とのバランスを考える視点も大切です。治療期間が短縮できれば通院回数が減りますし、抜歯を避けられるケースでは健康な歯を残せます。
長期的に見たとき、アンカースクリューの費用が適切な投資になる場合も多いでしょう。
矯正治療を始める前に、多くの方が気になるのが「費用」の問題です。どのように判断すればよいか迷われる方も少なくありません。料金の考え方などについて学びたい方には、下記の記事が参考になります。
歯根を傷つけるリスクがある
アンカースクリューを埋め込む際、位置を誤ると歯根を傷つけるリスクがあります。口の中は複雑な構造をしており、わずか数ミリのズレが問題につながる場合もあるのです。
しかし、経験豊富な矯正歯科医による適切な診断と埋入技術があれば、このリスクは軽減できます。多くの矯正歯科では、レントゲンなどで安全な位置を確認してから埋入するため、実際のトラブルは稀です。
以上、歯科矯正用アンカースクリューのメリットとデメリットを解説しました。
良し悪しを十分に理解した上、信頼できる矯正歯科医の提案のもとで治療方針を決めることが、理想の歯並びへの第一歩です。
裏側矯正とアンカースクリューの相性がいい理由
裏側矯正は、歯の裏側に装置を取り付けるため、治療中も装置が外から見えない矯正方法です。
裏側矯正単体でも、多くの症例で精密かつ効果的な歯の移動が可能ですが、さらにアンカースクリューを併用することで、より複雑な歯の動きにも対応できるようになります。
この組み合わせにより、
- 治療中は見た目を気にせず過ごしたい
- より美しい歯並びの仕上がりを目指したい
これらの希望の両方が実現可能になるでしょう。
矯正装置がほとんど見えないので人前で堂々と笑えますし、アンカースクリューによる精密な歯の移動で、歯1本1本を適切な位置に効率よく近づけていきます。
仕事やプライベートを大切にしながら、美しい口元を手に入れたい方にとって、「裏側矯正×アンカースクリュー」の組み合わせは、有効な選択肢の1つといえるでしょう。
裏側矯正治療の全体像や具体的な症例を確認したい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
また、裏側矯正が向いている方の特徴や、見た目以外のメリットデメリットも知りたい方には、下記の記事が参考になります。
まとめ：アンカースクリューは信頼できる矯正歯科へ
アンカースクリューという言葉に初めて触れたとき、疑問を感じた方も多かったのではないでしょうか。
矯正治療の選択肢が広がった現代だからこそ、どの方法があなたに合っているのかを見極める目が必要になります。
くれぐれも、アンカースクリューはすべての症例で必要なわけではありません。あくまで治療手段の1つとして認識しておきましょう。
患者さんの努力が治療の成否を分ける
どれほど優れた技術や器具を使っても、患者さんの協力なしに矯正治療は成功しません。これは25年以上の経験から断言できることです。アンカースクリューを使った治療でも同様です。
【治療中の患者さんに必要なこと】
- 毎日の丁寧な口腔ケアを継続する
- 歯並びに影響する癖などを意識的に改善する
- 定期的な通院スケジュールを守る
- 食事内容や食べ方に気をつける
特に、間違った「生活習慣」や「癖」を患者さん自身が意識的に改善できるかどうかで、治療期間や仕上がりが大きく変わってきます。
当院では、なぜその習慣が大切なのか、どう改善していけば良いのかを丁寧にご説明しながら、患者さんと一緒に理想の歯並びを目指していくことを大切にしています。
経験豊富な矯正歯科医を選ぶ大切さ
歯列矯正は一般の歯科医でも行えますが、十分な知識と技術が必要な分野であるため、専門の矯正歯科医のもとで治療を受けることが推奨されます。
さらに安心なのは、同じ矯正歯科医の中でも、豊富な臨床経験を持つドクターです。
多様な症例の経験があれば、アンカースクリューの埋入位置の判断、予期せぬトラブルへの対応、微細な調整など、あらゆる場面で的確な判断ができます。
自然な仕上がりになりやすいのも、経験の積み重ねがあるからです。
だからこそ当院では、25年以上のキャリアをもつ院長の私が責任をもって「すべての患者さん」の治療を担当しています。治療の質を最優先に考え、一人ひとりに確かな技術をお届けするためです。
歯並びを整えることは、見た目の改善だけでなく、あなたの人生に新しい自信をもたらすきっかけになるでしょう。
正しい知識と信頼できる矯正歯科医との出会いは、後悔しない選択への第一歩です。
