「八重歯ってこのままで大丈夫かな?」
「矯正は必要?時間もお金もかかるし…」
八重歯の矯正に迷いを感じている方は珍しくありません。私は25年以上にわたり歯科医師として治療に携わる中で、八重歯について多くの相談を受けてきました。実際に当院でも「矯正するべきか?」と相談されるケースは多いです。
「八重歯の矯正はするべきですか?」という質問に対して、私がお答えするのは「まず、あなたの八重歯の状態を正しく把握しましょう」ということ。その上で正しく見極めることが大切です。
この記事では、八重歯の矯正が必要な人の具体的な特徴から、危険度の簡単なセルフチェックまで詳しく解説していきます。
八重歯で悩むあなたが納得のいく判断ができるよう、裏側矯正専門医院の院長として、正直で実用的な情報をお届けします。ぜひ最後までお付き合いください。
▼お急ぎの方は動画に概要をまとめましたのでご覧ください▼
も く じ
Toggle八重歯は矯正するべきか?治療が必要な人の特徴7つ

八重歯を矯正するべきか迷っている場合、特に口腔機能や健康面で問題がある方は、積極的な治療の検討をおすすめします。
ここでは、八重歯の矯正が必要となる人の特徴を7つご紹介しましょう。
噛み合わせが悪く他の歯や顎に負担をかけている
八重歯による噛み合わせの問題は、単に歯がずれているだけではありません。上下の歯が正常に接触できないため、特定の歯や顎の筋肉に偏った力がかかり続ける場合があります。
噛み合わせ異常によるリスクは以下の通りです。
- 一部の歯に力が集中して摩耗が進みやすい
- 細かく噛み砕けず消化に影響を与えやすい
- 顎の関節への負担から顎関節症を引き起こす可能性
- 顎周りの筋肉が緊張して頭痛や肩こりを招く可能性
当院では、このような噛み合わせの問題を根本から解決するため、裏側矯正による治療を行っています。装置を歯の裏側に取り付けるため、治療中も比較的自然な表情で過ごしていただけます。
歯磨きがしにくく虫歯や歯周病のリスクが高い
八重歯の部分には、どうしても歯ブラシが届きにくい箇所ができてしまいます。これが虫歯や歯周病の原因となり、口腔健康に影響を与える場合があります。
歯が重なった箇所は食べカスやプラークが蓄積しやすく、丁寧に磨いているつもりでも完全に除去するのは困難です。実際に私が診察した患者さんの中でも、八重歯周辺に虫歯や歯肉炎を引き起こしているケースがよく見受けられます。
特に注意が必要なのは以下のようなケースです。
- 歯肉に炎症が起こり、出血しやすくなっている
- 細菌が繁殖して、口臭が発生しやすくなっている
- 同じ箇所に汚れが溜まり、虫歯を繰り返している
矯正治療により歯並びを整えることで、清掃性が向上し、長期的な口腔健康の維持が期待できます。
発音に影響が出て日常会話で困っている
八重歯が原因で発音が不明瞭になり、日常会話や仕事でのコミュニケーションに支障をきたしている場合は、矯正治療を検討した方がいいでしょう。
八重歯によって舌の動きが制限されたり、息の流れが妨げられることで、発音に自信が持てなくなる方は多いです。参考に、発音が及ぼす影響の可能性は以下の通りです。
- 「サ行」「タ行」で舌がうまく動かず不明瞭になる
- 「ラ行」の音が「ガ行」のように聞こえてしまう
- 話し相手に何度も聞き返されることが増える
- 周囲から滑舌が悪いと指摘されることが増える
- 早口で話すと、より一層聞き取りにくくなる
当院では、矯正治療後に「話すのが楽になった」という声をいただくこともあります。矯正は見た目の変化だけでなく、機能面での改善も大きなメリットといえるでしょう。
口が閉じにくく頻繁に口呼吸になってしまう
八重歯があると唇がきちんと閉じられず、常に口がポカンと開いた状態になる場合があります。この状態は口呼吸を引き起こし、複数の健康リスクを招きます。
口呼吸が習慣化すると、本来鼻で行うべき空気の加湿・加温・フィルタリング機能が十分に得られません。その結果、口の中が乾燥し、唾液による自然な洗浄・殺菌作用が低下するおそれがあります。
さらに深刻な問題として、以下のような影響も考えられます。
- のどの粘膜が乾燥して炎症を起こしやすくなる
- 口の中の細菌が増殖して口臭が強くなることがある
- ウイルスや細菌が直接体内に入り風邪を引きやすくなる
また、口を開けたまま寝ることで舌や下顎が重力により奥に下がり、気道を圧迫することで、いびきや睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まる場合もあるでしょう。
唇や頬の内側を繰り返し傷つけている
八重歯の尖った部分が唇や頬の内側に当たり、繰り返し傷つけてしまう場合は、早めの矯正治療をおすすめします。慢性的な刺激は思わぬトラブルを招く可能性があるためです。
最初は小さな傷でも、同じ場所が何度も傷つけられることで炎症が慢性化し、口内炎が治りにくくなったり、傷の回復が遅延する場合があります。症状に対する対処の必要性は以下の通りです。
症状 | 対処の必要性 |
---|---|
軽度の傷ができる | セルフケアで様子見も可能だが、根本解決には矯正治療の検討を推奨 |
口内炎を繰り返す | 対症療法では限界があるため、矯正歯科での相談により根本的解決を図る |
慢性的に炎症が続く | 薬物治療だけでは再発するため、矯正治療による歯列改善を検討する |
長期で治らない口内炎 | 口腔外科での精査後、矯正治療により刺激の原因となる歯並びの改善を検討する |
※症状の程度による対処の必要性には個人差があります。
私が診察する患者さんの中にも、「いつも同じ所を噛んでしまう…」と話される方が多いです。このような物理的な刺激を根本的に解決するには、やはり八重歯の位置を正常な場所に移動させる「矯正治療」が良い選択の1つでしょう。
八重歯の見た目に強いコンプレックスがある
八重歯の見た目にコンプレックスを強く感じている場合、精神的な健康のためにも矯正治療を検討した方がいいでしょう。
職業上、人前に出る機会が多い方や、接客業に従事されている方にとって、歯並びの印象は特に重要な要素となります。第一印象の多くは見た目で決まるため、八重歯が原因で自信を失うのは非常にもったいないことです。
当院で矯正を終えた患者さんからは、以下のような変化の声をよくお聞きします。
- 写真や動画撮影が楽しくなった
- 人前で自然に笑えるようになった
- 自信を持って話せるようになった
- マスクを外すことに抵抗がなくなった
- 性格が明るくなったと周りから言われた
当院が専門とする裏側矯正は、装置が目立ちにくく、矯正中も気づかれにくい状態で日常生活を送ることができます。治療中の見た目のストレスを軽減しながら、コンプレックスを解消し、理想の歯並びを目指せるでしょう。
将来的に歯茎の退縮や歯の動揺が懸念される
八重歯の位置によっては、将来的に歯茎の退縮や歯の動揺といった問題を引き起こす可能性があります。これらは一度進行すると改善が難しい場合があるため、早期の対応が重要です。
例えば、八重歯が歯茎の薄い部分に位置していたり、骨のサポートが不十分な場所にあると、将来的に歯茎が下がり、歯の根が露出するおそれがあります。
このような状態は見た目の問題だけでなく、知覚過敏や根面う蝕(歯の根の虫歯)のリスクを高め、歯の寿命にも影響を与えるでしょう。参考に、現時点でリスクのある症状は以下の通りです。
- 歯茎と歯槽骨が薄い状態で退縮しやすい状態
- すでに軽度の歯茎退縮が始まっている兆候が見られる
- 歯がぐらつくような感覚があり歯の動揺が疑われる状態
私は25年以上の経験から、このような深刻なリスクこそ早期に発見し、適切な時期に矯正治療を開始することの重要性を痛感しています。
「あの時にやっておけばよかった…」と後悔しないためにも、予防的な矯正治療により、あなたの将来の歯の健康を守ることが大切です。
以上、八重歯は矯正するべきかについて、治療が必要な人の特徴を解説しました。もし心当たりがある場合は、口腔機能や健康に関わる重要な治療として捉え、矯正歯科医による適切な診断を受けることから始めましょう。
あなたは大丈夫?八重歯の危険度セルフチェック

早期に八重歯を矯正するべきかどうかは、症状の程度によって異なります。すべての方が直ちに矯正が必要というわけではありませんが、放置することで将来的に大きな問題を引き起こす可能性は軽視できないでしょう。
ここでは、あなた自身で簡単にできるセルフチェック方法をご紹介します。まず鏡を用意して、リラックスした状態でチェックしてみて下さい。
※ただし、セルフチェックは簡易的なものであり、正確な診断には歯科医師の診察や検査が必要です。
見た目・機能面・健康面をチェックする
八重歯の見た目や他の歯との関係から機能面・健康面までを、できる範囲で確認してみましょう。歯科矯正の観点から、以下の各症状は治療の優先度を判断する指標となります。
□ | 見た目・位置に関する項目 |
---|---|
□ | 歯列から明らかに前方へ飛び出している |
□ | 正常な歯茎のラインから大きく外れている |
□ | 八重歯と隣の歯の間に隙間や重なりが生じている |
□ | 上下の歯を閉じた時に八重歯が下の歯に全く触れない |
□ | 自然に笑った時に八重歯が過度に目立って見える |
□ | 口を閉じた状態でも八重歯が唇を押し上げている |
□ | 機能面・咀嚼への影響 |
---|---|
□ | 食事中に硬い物を八重歯の部分で噛めない |
□ | 八重歯のせいで左右の噛み合わせのバランスが悪い |
□ | 八重歯が噛み合わせに全く参加していない |
□ | 八重歯のせいで顎の動きが制限される感覚がある |
□ | 言葉を話す時に八重歯が邪魔になっている |
□ | 唇を閉じる時に意識しないと閉じにくい |
□ | 健康面・口腔衛生の項目 |
---|---|
□ | 八重歯で同じ場所(唇や頬、舌など)を定期的に噛む |
□ | 歯磨きやフロスがしにくく清掃が難しい |
□ | 八重歯の部分に食べ物が挟まりやすい |
□ | 根元に歯垢や歯石が蓄積している |
□ | 八重歯周辺の歯茎が赤く腫れたり出血したりする |
□ | 表面に着色や汚れが目立っている |
あなたはいかがでしたか?
おおよその目安として、3つ以上当てはまる場合は早期の歯科受診を、1〜2つでも機能面や健康面の項目に該当する場合は、一度歯科医師に相談されることをおすすめします。
矯正するべきかどうかは、見た目の改善だけでなく、咀嚼機能や口腔衛生、全体への影響も含めた総合的な判断が重要です。
※症状の程度や組み合わせによって治療の必要性には個人差があります。
日常生活での影響をチェックする
次に、日常生活の中で感じている不便さや気になる症状について振り返ってみましょう。下記全てが八重歯の影響とは限りませんが、八重歯が原因で起こっている場合も少なくありません。
□ | チェック項目 |
---|---|
□ | 朝起きた時に口の中が乾燥している |
□ | 家族や友人などに口臭を指摘されたことがある |
□ | 写真を撮る時に無意識に口元を手で隠そうとする |
□ | 人前で大きく口を開けて笑うことをためらう |
□ | 無意識に口が半開きになることがある |
□ | 歯ブラシの毛先が家族より早く広がる |
□ | マスクを外して人と会うことに抵抗を感じる |
日常生活への影響を我慢し続けると、ストレスの蓄積や生活の質の低下などを招くおそれもあります。チェック項目以外にも、不便さなどに心当たりがあれば、原因の特定も含めて歯科医師による詳しい診断をおすすめします。
以上、セルフチェックはあくまでも目安ですが、あなたの八重歯の状態を客観的に把握するきっかけとして活用してみて下さい。気になる項目が見つかった方は、矯正するべきかを自己判断のみで完結せず、信頼できる矯正歯科医に相談するようにしましょう。
矯正歯科選びは治療の成功を大きく左右する重要な要素です。選び方でお悩みの方は、カウンセリングに行く前のチェックポイントなどを解説した下記の記事もあわせてご覧ください。
矯正歯科医が語る八重歯を残す選択肢について

「八重歯の人ってたくさんいるし…矯正の必要はある?」と考える方も多いです。確かに八重歯は矯正するべきか検討した末に、残す選択肢をとるケースも珍しくありません。
ただし、25年以上の歯科実績をもつ私としては、基本的にはおすすめしていません。個々の状況により詳細な判断は異なりますが、なぜ八重歯を残す選択をおすすめしないのか、その理由を詳しくお話しします。
見た目以上に深刻な問題が隠れている
例えば、八重歯があっても「今は特に困っていない」という方は、現在症状がないからといって将来も安全とは限りません。
私はこれまで数多くの患者さんを見てきました。来院前の患者さんが「放っておいても大丈夫だろう」と自己判断していた八重歯が後々問題となった経験をすることもあります。
虫歯や歯周病、口内炎、他の歯への過度な負担など、記事前半の「治療が必要な人の特徴7つ」で解説したような問題です。
「今は大丈夫」が通用しない年代を迎える
20代や30代では、八重歯があってもトラブルに自覚がない方が多いのですが、年齢を重ねるにつれて、問題が表面化するケースも増えてきます。これは加齢による口腔環境の変化が原因の1つです。
以下に、各年代で起こりやすい問題をまとめました。
【20代】
起こりやすい問題 | 歯垢蓄積・ブラッシング困難・軽度の歯肉炎・食べ物の挟まり |
補足 | 八重歯があっても痛みや不便を感じにくい年代。清掃困難の程度は八重歯の重なり具合で個人差が大きい。 |
【30代】
起こりやすい問題 | 歯石沈着・重なり部分の虫歯・慢性的な歯肉の腫れ・口臭(局所的)・噛み切り機能の低下 |
補足 | 仕事や社会生活で人前に立つ機会が増える一方、八重歯周辺の汚れ蓄積による実害(口臭・虫歯)も表面化しやすい年代。 |
【40代】
起こりやすい問題 | 歯茎退縮・重なった歯の深い虫歯・歯周ポケット形成・咬合時の干渉・知覚過敏(八重歯部分) |
補足説明 | 長年の清掃困難による炎症の慢性化と、免疫力低下が重なって八重歯周辺の問題が深刻化しやすい年代。 |
【50代以降】
起こりやすい問題 | ぐらつき・隣接歯への影響拡大・咀嚼効率の低下・八重歯抜歯のリスク・全体的な歯並びの悪化 |
補足説明 | 八重歯周辺の歯周病が隣接歯にも波及し、口全体の問題に発展しやすい。矯正治療には事前の歯周病治療が必要となるケースが多い年代。 |
※上記は一般的な傾向の目安であり、八重歯の程度、口腔ケアの状況、体質などにより個人差があります。
若い頃に「八重歯を残したい」と希望していたものの、年月が経って後悔を口にする方も多いです。特に、歯茎の退縮によって八重歯の根が露出し、知覚過敏や見た目の悪化が起こるリスクには注意したいところです。
また、年齢を重ねてから矯正治療を始めた場合、骨の代謝が若い時より低下するため、歯の移動に時間がかかる傾向があります。
部分的な対処では根本解決にならない
「尖った部分だけ削って丸くすれば大丈夫」
「定期的にクリーニングを受けているから問題ない」
といった考え方では、根本的な解決にはなりません。これらの方法は、症状の軽減には役立ちますが、歯並びや嚙み合わせなどの構造的な問題は何も改善されないからです。歯の形を調整する方法は、削ることで歯質が弱くなり、新たなトラブルを引き起こす可能性もあるでしょう。
「早期に根本的な治療を行っていれば…」と思いながら、患者さんの苦しむ姿を見る度、やはり適切な時期での矯正の重要性を痛感します。
以上から、八重歯を残す選択は、多くの症例において基本的におすすめしていません。現在は軽度でトラブルがない場合でも、長期的な口腔健康を考えれば、将来への備えとして矯正治療による改善が望ましいと考えます。
八重歯矯正を始める前に、どの治療法が自分に合っているのか、信頼できる医院をどう選べばよいのかなど、疑問をお持ちの方も多いでしょう。八重歯矯正の基本知識から医院選びまで包括的に理解したい方には下記の記事が参考になります。
まとめ:八重歯を矯正するべきか歯科医へ相談を

八重歯に悩んでいる方にとって、矯正するべきかどうかは重要な決断です。チャームポイントとして愛着をもつ一方で、将来への不安も同時に抱えている方も多いでしょう。
私が長年の矯正治療の経験から学んだことは、八重歯の問題は一人ひとり大きく異なるということです。同じように見える八重歯でも、その方の骨格や歯並び、生活習慣や癖によって、取るべきアプローチは変わります。
だからこそ、一般的な情報だけで判断するのではなく、信頼できる矯正歯科医による詳細な検査と診断が欠かせません。セルフチェックで違和感を覚えた項目があるなら、今がまさに相談するタイミングと考えます。
八重歯があることで、
- 会話中に手で口元を覆ったり
- 人前で笑うことをためらったり
- 写真や動画撮影で口元を隠したり
- 大きな口で食事することを避けたり
- 他人の歯並びと比較してしまったり
このような様子を見ると、本当にもったいないと感じます。あなたの表情や笑顔が、八重歯への不安によって曇ってしまうのは悲しいことです。
当院が専門にする「裏側矯正」なら、歯の裏側に装置を取り付けるため、表側矯正と比べて装置が目立たず、見た目への影響を抑えながら理想の歯並びを目指せます。
裏側矯正の治療手順について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
矯正治療は多くの場合、見た目を変えるだけでなく、口腔機能の改善により健康面での効果も期待できます。また、コンプレックスから解放されることで、気持ちの変化や新しい自分に出会える方も多いでしょう。
八重歯を矯正するべきかどうか1人で悩むよりも、歯科医師と対話することで発見があるはずです。この記事を通じて、あなたの八重歯への向き合い方が変わり、歯並びの改善を考えるきっかけになれば幸いです。