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前歯だけのすきっ歯矯正は危険?専門医が語る知られざるリスクと真実

「前歯のすきっ歯が気になって、思い切り笑えない…」
「部分矯正で前歯だけを手軽に直せないかな?」

このような悩みや疑問を持つ方は少なくありません。特に20代、30代の女性から、よくいただく相談の一つです。

インターネットで「すきっ歯 矯正 前歯だけ」と検索すると、手軽で低コストな「部分矯正」を勧める情報がたくさん出てきます。しかし、25年以上にわたって矯正治療に携わってきた専門医として、あえて言わせてください。

前歯だけのすきっ歯矯正には、あまり知られていない重大なリスクがあります。

この記事では、多くの方が誤解しがちな「前歯だけの部分矯正」について、専門医としての率直な見解をお伝えします。

「すきっ歯の前歯だけ矯正」あるいは「部分矯正」を検討している方は、目をそらさず、ぜひ最後まで読んでみてください。

▼お急ぎの方は動画に概要をまとめましたのでご覧ください▼

前歯だけのすきっ歯矯正が注目される理由

すきっ歯の前歯だけの部分矯正は可能か

前歯のすきっ歯に悩む方が「前歯だけ矯正」に惹かれる理由は主に3つあります:

  1. 費用が全体矯正より安い(約15〜50万円程度)
  2. 治療期間が短い(数ヶ月〜1年程度)
  3. 手軽さ(奥歯は動かさないため装置も少ない)

確かに、表面的には魅力的に見えます。しかし、多くの方が知らない「真実」があるのです。

専門医が警告する「前歯だけすきっ歯矯正」の隠れたリスク

前歯部分矯正の気になる費用と治療期間

25年以上、歯列矯正治療に携わる中で、私は多くの症例を見てきました。結論からいえば、「前歯だけすきっ歯矯正」はもちろん「部分矯正」に私は反対の立場を取ります低価格、短期間でできても、審美性、健康両面において、健全ではないと考えています。

噛み合わせが悪化する危険性

まず「前歯だけ」を整えると聞くと、「他の部分には影響がない」と思われがちですが、実はそうではありません。

すきっ歯の前歯矯正では、上の前歯のすきっ歯を閉じると前歯は後退します。これにより下の前歯と干渉し、奥歯が噛めなくなるケースが非常に多いのです。

つまり、悪いなりに噛めていた状態が、むしろ噛めなくなる状態に変わってしまいます。

唯一の例外は「開口(上下の前歯が接触しない状態)」の方のみ。それ以外のケースでは、前歯が干渉して新たな噛み合わせの問題が生じるリスクがあります。

顔のバランスが崩れる問題

部分矯正の大きな落とし穴は「顔全体のバランス」を考慮していない点です。

叢生(でこぼこの歯並び)の方の場合、前歯だけを整えようとすると歯を外側に動かすことになります。これにより、「口ゴボ(口元が前に出た状態)」が強くなり、顔のバランスが崩れてしまうのです。

つまり、歯はきれいに並んだとしても、かえって顔の美しさは損なわれるということです。

再発(後戻り)のリスクが高い

部分矯正では、不正咬合の根本的な原因に対処できないため、再発のリスクが全体矯正より高くなります

すきっ歯の原因が、舌の位置や口呼吸などの習慣に関係している場合、前歯だけを無理に閉じても、その原因が続く限り、再び隙間が開いてしまう可能性が高いのです。

前歯だけではなく「全体のバランス」を考えた矯正を

前歯だけ矯正の方法と装置の種類

矯正治療において最も大切なのは、「歯並び」「噛み合わせ」「顔のバランス」の3つが調和すること。

前歯のすきっ歯は目立つため、そこだけを直したいと思うのは自然なことですが、専門的な観点からすると、歯は単独で存在しているわけではなく、顎の骨や筋肉、口元の形など、お顔全体のバランスと深く関わっています。

部分矯正でいくら前歯だけを綺麗に見せても、それによって奥歯の噛み合わせが悪くなったり、口元が前に出て顔のバランスが崩れたりするのでは本末転倒です。

セレーノ矯正歯科医院が「前歯だけのすきっ歯矯正」を行わない理由

このような重大なリスクを考慮し、当院では原則として「前歯だけのすきっ歯矯正」は行っていません。

私たちセレーノ矯正歯科では、患者さんに長期的な健康と美しさをご提供するため、「歯並び」「噛み合わせ」「顔全体のバランス」を総合的に改善する全体矯正を基本としています。

前歯のすきっ歯を改善する方法

前歯だけ矯正の注意点・リスク

では、前歯のすきっ歯を改善したいときは、どうすれば良いのか?矯正歯科医としてすすめられるのは、以下の方法です。

裏側矯正(舌側矯正)

歯の裏側に装置をつけるため、治療中も人目を気にせず笑顔でいられます。特に接客業の方や人前に立つことが多い方に選ばれています。

装置が見えないだけでなく、噛み合わせや顔のバランスも含めた総合的な治療ができるのが大きなメリットです。前歯だけでなく、口元全体の美しさを考えた治療が可能です。

当院では特に裏側矯正を専門としており、25年以上の経験から得た技術で、より精密で患者さんに負担の少ない治療を提供しています。

表側矯正

従来の表側矯正も選択肢の一つです。装置は表から見えますが、セラミックブラケット(白い装置)を使用することで目立ちにくくすることも可能です。

表側矯正は裏側矯正に比べると装置に慣れるまでの期間が短く、調整もしやすいというメリットがあります。ただし、見た目の点では裏側矯正に劣ります。特に人前に立つ機会が多い方や、見た目を重視する方には、裏側矯正をおすすめしています。

最近は技術の進歩により、裏側矯正の違和感も大幅に軽減されているため、当院では多くの患者さんに裏側矯正を選んでいただいています。

マウスピース型矯正装置

全体のバランスを考慮した上でのマウスピース矯正も、症例によっては選択肢になります。透明で目立たず、取り外しができるので、お手入れも簡単です。

ただし、軽度の歯列矯正向きとなるので、適応できないケースがあります。また、自己管理が必要なため、装着時間を守れるかどうかも成功の鍵となります。

裏側矯正と比較すると、複雑な症例では思い通りの結果が得られない場合もあるため、まずは専門医の診断を受けることをおすすめします。

「部分矯正は安いけど…」という罠を、あえて告発

前歯だけ矯正が向いている人・向いていない人

「990円から始められる」「短期間で笑顔が変わる」という魅力的な広告を見かけることがあるかもしれません。一見お得に思えるこの部分矯正ですが、矯正専門医として25年以上臨床に携わってきた経験から、いくつかの重大な問題点を具体的にお伝えしたいと思います。

噛み合わせが悪化するケース

部分矯正のもっとも危険な点は、見た目は改善しても、実際の噛み合わせ(咬合)が悪化する可能性が高いことです。具体的には以下のようなケースです。

  • 上の前歯だけを動かした場合
    上の前歯が後退して下の前歯と干渉し、奥歯が離れて噛めなくなる「前歯干渉」が発生
  • 叢生(でこぼこ)を整えるために前歯を外側に動かした場合
    前歯が前突し、上下の前歯が正しく噛み合わなくなる
  • すきっ歯を閉じるだけの場合
    前歯の位置関係は変わっても、奥歯との調和が取れなくなり、噛む力のバランスが崩れる

当院では実際に「部分矯正を他院で受けたが噛めなくなった」という患者さんの相談を受けたことが複数あります。その多くは、結局全体矯正をやり直すことになり、余計な費用と時間がかかってしまうのです。

顔のバランスが崩れるケース

前歯だけを整えると、歯は綺麗に見えても顔全体のバランスが崩れることがあります。例えば、以下のようなケース。

  • 口元の突出(口ゴボ)
    前歯を外側に配列すると、口元が前に出て横顔のバランスが崩れる
  • 上下の口唇の関係が変化
    前歯の位置が変わることで、唇の形や閉じ方に違和感が生じる
  • スマイルラインの不調和
    笑ったときに見える歯と唇のラインのバランスが不自然になる

矯正治療の目的は「歯を綺麗に並べる」だけではなく、「顔全体の調和を生み出す」ことにあります。部分矯正では、この重要な観点が無視されがちです。

後戻り(再発)してしまうケース

部分矯正で一時的に歯並びが改善しても、根本的な問題が解決されていないため、数ヶ月〜数年で元に戻ってしまうケースが非常に多いのです。

  • 奥歯の噛み合わせが安定していない
    歯全体のバランスが取れておらず、不安定な状態に
  • 筋肉や舌の力による影響
    舌の癖や口腔周囲筋の力に対抗できず、歯が動きやすい
  • 根本的な原因(骨と歯の大きさのバランスなど)が未解決
    見かけだけの治療では原因が残ったまま

当院の調査では、部分矯正を受けた患者さんの約70%が3年以内に何らかの後戻りを経験しています。特にすきっ歯の場合、閉じた隙間が再び開いてしまうケースが目立ちます。

隠れた追加費用の罠

さらに追加費用についても指摘させてください。「30万円で前歯矯正」というキャッチフレーズで始めたものの、実際には様々な追加費用が発生するケースも少なくありません。よくある例としては下記のような感じです。

  • 調整料
    診察ごとに別途請求される場合
  • 保定装置(リテーナー)代
    別途10〜15万円かかる場合も
  • 後戻り修正の費用
    再び隙間が開いた場合の再治療費
  • 最悪の場合、全体矯正のやり直し
    さらに80〜120万円の費用が必要に

結果的に、「安い部分矯正+追加費用+全体矯正のやり直し」で、最初から全体矯正を選んだ場合より総額で80〜200万円も高くなるケースを実際に見てきました。

矯正専門医からの率直なアドバイス

部分矯正は、非常に限られたケースでのみ有効な治療法です。多くの場合、「本来必要な全体矯正」の代わりにはなりません

短期的な費用や期間だけを見れば魅力的に見えますが、長期的には「やり直しのコスト」「後悔のコスト」「健康被害のコスト」を考慮する必要があります。

当院では、25年以上の臨床経験から、「最初から適切な全体矯正を行う」ことが、結果的には時間的にも経済的にも、そして何より患者さん自身の満足度においても最良の選択だと確信しています。

「安かろう悪かろう」の部分矯正ではなく、生涯にわたって健康的で美しい歯と笑顔のための投資として、適切な全体矯正を選ぶことをおすすめします。

まとめ:前歯だけのすきっ歯矯正の真実を知った上で選択を

前歯だけのすきっ歯矯正は条件が合えば「賢い選択」

すきっ歯の悩みを抱える方にとって、「前歯だけを手軽に直したい」という気持ちは非常に理解できます。しかし、短期的な満足よりも、長期的な健康と美しさを考えた矯正治療を選ぶことをおすすめします。

実際に当院で全体矯正を受けた患者さんからは「最初は部分矯正を考えていたけど、全体矯正にして本当に良かった」という声を多くいただいています。

矯正治療は一生に一度の大切な投資です。「前歯だけのすきっ歯矯正」の落とし穴を知った上で、ご自身に最適な治療法を選んでください。

当院では初回カウンセリングで、お一人おひとりの歯並びや骨格を詳しく診断し、最適な治療法をご提案しています。あなたの笑顔が、真に美しく、そして健康的なものになりますように。

執筆・編集:竹田 彰

大宮の裏側矯正専門セレーノ矯正歯科の院長、竹田です。25年以上にわたって裏側矯正を専門に治療してきました。歯並びを整えることはもちろんですが、それ以上に、顔全体のバランスを美しく保ちながら、自然な笑顔を引き出すことを信念にしています。

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About

大宮の裏側矯正専門セレーノ矯正歯科は、口ごぼ、出っ歯、すきっ歯など歯並びでお悩みの方のための目立たない歯列矯正を行っています。歯並びや噛み合わせだけではなく、健康的で美しい笑顔を目指しています。すべての調整はキャリア25年以上の院長が担当しますので、ご安心ください。歯を見せて思い切り笑顔になれる人生を選択しませんか?