鏡を見たときや、ふと撮られた写真を見返したとき――「なんだか口元がもっこり出てる気がする」「横顔がスッキリしない…」そんな違和感を覚えたことはありませんか?
いわゆる“口ゴボ(くちごぼ)”と呼ばれる状態は、顔全体のバランスに影響を与えるだけでなく、自信を持って笑えなかったり、横顔にコンプレックスを抱えてしまったりする原因になることもあります。
そしてあまり知られていないようですが、その口ゴボの大きな原因のひとつが「口呼吸の習慣」にあることをご存じでしょうか?
口呼吸は、見た目だけでなく、健康や歯並び、舌の位置、顔の筋肉の使い方にまで深く関係しており、放置しているとますます“口元が出て見える”原因になってしまうのです。
この記事では、口ゴボとはどんな状態か、ということから、口呼吸がなぜ口元の見た目に影響するのか、どうやって改善していけば良いのかについて、矯正の専門的な視点からわかりやすく解説していきます。
私は歯列矯正治療に携わり、早25年以上となりました。口ゴボでお悩みの方は多いですが、もしかしたら“呼吸”と“癖”を見直すだけで、少しの改善は期待できるかもしれません。
ぜひ最後まで読んで、日常の小さな習慣から見直してみてくださいね。
も く じ
Toggleそもそも口ゴボとは?【見た目の特徴とセルフチェック】

「口元が出てる気がするけど、これって口ゴボ?」
そんなふうに思っている方に向けて、まずは“口ゴボ”の状態がどんなものかを詳しく見ていきましょう。
見た目の特徴:Eラインをチェックしてみよう
口ゴボとは、上下の前歯や唇が前方に突き出している状態のことを指します。見た目の特徴としてわかりやすいのが、横顔のバランスです。
「Eライン」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、鼻の先端と顎(あご)の先端を結んだラインのこと。美容や矯正の世界では、このラインの内側に唇が収まっている状態が“美しい横顔”の目安とされています。

しかし、口ゴボの方はこのEラインよりも口元が前に出てしまっていることが多く、横顔の印象がぼやけてしまう傾向があります。
その他の特徴としては、次のようなことがいえます。
- 口が自然に閉じられない
- 笑うと歯茎が大きく見える(ガミースマイル)
- 口角が下がって見える
- 常に口がポカンと開いてしまう
こうした症状がある場合、口ゴボの可能性があると言えるでしょう。
自分でできる簡単セルフチェック
自宅でできる簡単なセルフチェック方法を試してみましょう。
✔ 鏡を横にしてEラインチェック
- 手鏡を顔の真横に持って、自分の横顔をチェック。
- 鼻先と顎先を結ぶライン(Eライン)をイメージして、そのラインよりも唇が大きく前に出ていないかを確認。
✔ 唇を自然に閉じられる?
力を入れずに唇を閉じてみてください。もし閉じるときにあごに力が入ってしまうようなら、前歯や口元が前に出すぎている可能性があります。
✔ 口を閉じた状態で舌の位置は?
唇を閉じた状態で、舌が下の歯にくっついていないかもチェックポイントです。舌の正しい位置は、上顎の少し窪んだ部分(“スポット”)にあります。もし下の方に舌が落ちているようなら、口呼吸のクセがついてしまっているかもしれません。
口呼吸と口ゴボの深い関係

「昔から口が開きがちかも…」
「気づくといつも口で呼吸してる」
一般にはあまり知られていないようですが、そんな“口呼吸のクセ”が、実は口ゴボを悪化させる大きな原因です。
口呼吸がもたらす3つの悪影響
口呼吸とは、読んで字のごとく“口で呼吸する”習慣のこと。風邪やアレルギーで一時的に口呼吸になるのはよくあることですが、これが習慣化してしまうと、見た目にも大きな影響を与えてしまいます。
中でも、次の3つは口ゴボと深く関わっています。
舌の位置が下がる(=舌の低位)
本来、舌は上顎の少し窪んだ部分(“スポット”と呼ばれる位置)に軽く当たっているのが理想です。しかし、口呼吸が習慣になると、舌が下の歯の裏側や口の底に落ちたままの状態になってしまいます。
すると、舌が上顎を広げる“自然な圧”がかからなくなり、歯列が横に広がらず、前方に押し出されるような形になってしまうのです。
筋肉のバランスが崩れる
口を閉じるには、唇まわりの「口輪筋(こうりんきん)」という筋肉を使います。ところが、常に口が開いている状態が続くと、この筋肉がゆるんでしまい、口元に締まりがなくなってしまいます。
その結果、前歯を支える力が弱まり、歯列が前に出やすくなる=口ゴボの一因になるのです。
噛み合わせや骨格の発育に悪影響
さらに、成長期に口呼吸のクセがついてしまうと、上顎の発育がうまくいかず、噛み合わせのズレや骨格のゆがみにもつながります。
特に、下顎が後退して見える「下顎後退型」の口ゴボは、口呼吸との関係が非常に深いといわれています。
口呼吸がもたらす悪影響を放置するとどうなるのか

「口呼吸、なんとなく身体に悪そうだけど…」
そう感じつつも、つい放置してしまっている方は多いのではないでしょうか?
でも実は、口呼吸は見た目にも健康にも、想像以上に深刻な悪影響を与える習慣なんです。ここでは、具体的なリスクを3つの側面からご紹介します。
見た目の崩壊|口元・横顔・ほうれい線に影響
口呼吸のクセがあると、常に口が半開きになりやすく、唇の筋肉が衰えていきます。その結果、以下のような顔の表情になっていく可能性があるのです。
- 口元が前に出て「口ゴボ」に見える
- 唇がぽってり下がり、締まりのない印象に
- 口周りの筋肉がゆるみ、ほうれい線が深くなる
特に横顔のバランス(Eライン)が崩れやすく、実年齢よりも老けて見えてしまいます。
機能面のリスク|虫歯・口臭・いびき・睡眠の質の低下
口呼吸では、空気が直接口腔内に入るため、唾液が蒸発して口の中が乾燥しがちになります。この乾燥状態が、次のようなトラブルの引き金になるのです。
- 虫歯・歯周病が増える(唾液の抗菌作用が働かない)
- 口臭が強くなる(細菌が繁殖しやすい)
- いびき・無呼吸の原因に(舌が下がり気道をふさぐ)
- 睡眠の質が下がる(疲れが取れにくくなる)
美容面だけでなく、健康面でもさまざまな不調を引き起こす可能性があるため、軽視できない問題といえますよね。
成長期の子どもへの影響|顔つき・呼吸の発達に関わる
もしお子さんが「ぽかん口」「口を閉じるのが苦手」「よくいびきをかく」などの症状がある場合、口呼吸のサインかもしれません。
成長期に口呼吸が習慣化してしまうと…
- 上顎が発達せず、顔が縦長になる
- 歯並びが乱れやすくなる
- 鼻呼吸ができず、集中力が下がる
顔つきの印象だけでなく、脳や身体の発達にまで影響するケースもあるため、早めの対応が重要です。
今すぐ見直したい!口呼吸の原因と生活習慣

「気づけば口がポカンと開いている…」といった習慣は、日常のちょっとした癖が原因になっていることが少なくありません。口呼吸をやめるためには、まずは、”なぜそうなっているのか”を知ることが大切。
ここでは、口呼吸につながりやすい原因や生活習慣を、わかりやすくご紹介します。
姿勢の悪さ
スマホを見ているとき、無意識に猫背になっていませんか?
最近、10~20代の若い人を中心に増加傾向にありますが、背中が丸くなると、首が前に出て顎が下がり、舌の位置が自然と下がってしまいます。その結果、口が開きやすくなり、口呼吸がクセになるのです。
デスクワークやスマホ時間が長い方は、姿勢をこまめにリセットする意識を持ちましょう。椅子に深く座り、骨盤を立てて、頭のてっぺんを糸で引っ張られているような感覚を意識すると良いです。あるいは、Googleなどの有名企業では、立って会議をしたり、デスクワークをする人も多いようですが、椅子に座らないというのも良い対策です。
鼻詰まりやアレルギー
慢性的な鼻炎・花粉症・アレルギー体質の方は、鼻呼吸がしづらく、つい口で呼吸してしまう傾向にあります。
これは仕方がないこととはいえ、呼吸の通り道として口を使うことが当たり前になると、舌が上顎に触れず、低位舌(ていいぜつ)という状態になりやすく、これが口ゴボの原因にもなり得ます。
慢性的に鼻の通りが悪いと感じたら、耳鼻科での診察や治療を検討してください。それが当たり前になってしまうほど、長期的な健康リスクはもちろん、見た目の変化にも影響を及ぼすので、軽視しないことです。
また、寝るときは加湿器を使ったり、口閉じテープを活用したりするのもおすすめです。
枕の高さ・寝姿勢
意外と見落とされがちなのが、「枕の高さ」。
高すぎる枕で寝ていると、顎が引けて気道が狭くなり、自然と口が開いてしまうことがあります。また、うつ伏せ寝や横向き寝も、呼吸がしづらくなる原因になるので、注意しましょう。
枕は、首のカーブを自然に支えてくれる高さを選び、仰向けで寝る習慣をつけるのが良いとされています。
食事や会話のときの「舌と口の使い方」
食べるときにあまり噛まない、舌で前歯を押している、会話中に口をポカンと開けたまま――これらはすべて、口周りの筋力低下や舌の位置異常につながっていきます。当たり前のようですが、心当たりのある方は、下のことを意識してください。
よく噛んで食べる(30回が目安)
食事中は口を閉じる意識を持つ
話すときも、口元をしっかり動かす
こうした小さな積み重ねが、口呼吸の予防にもつながります。
口呼吸を改善するための具体的な方法

「口呼吸をやめたい」「口ゴボをどうにかしたい」――そう思ったとき、何から始めればよいのでしょうか?
ここでは、今日からでもできる呼吸改善のセルフケアを中心に、歯列矯正歯科の立場から専門的なアプローチまでご紹介していきます。
鼻呼吸トレーニング|まずは「鼻から呼吸する」癖づけを
口呼吸の改善には、まず鼻でしっかり呼吸できる状態を整えることが第一歩です。
鼻うがい
鼻詰まりや花粉症、慢性的な鼻炎がある人は、鼻うがいで鼻腔の通りを良くしましょう。市販のキットを使えば、痛みもなく手軽にケアできます。
鼻テープ
就寝時に口が開いてしまう人は、鼻呼吸促進テープを使うのもおすすめ。鼻腔を物理的に広げてくれるため、呼吸が楽になり、口を閉じやすくなります。
呼吸法の見直し
浅い呼吸をしていないかチェックしてみてください。腹式呼吸を意識し、ゆっくりと深く吸って吐く習慣をつけましょう。ストレス軽減にもつながります。
舌の位置トレーニング|「スポット」に舌を置けていますか?
舌の正しい位置は、「スポット」と呼ばれる場所。上の前歯のすぐ後ろ、少し窪んだところに舌の先を軽くつけるのが正解です。
この位置に舌が自然にあることで、
歯並びが安定する
口が閉じやすくなる
フェイスラインが引き締まる
といったメリットがあります。
話していないとき、リラックス時にも舌が上についているか、日常的に意識してみましょう。
MFT(口腔筋機能療法)で舌・唇・頬の筋トレ
より本格的に口呼吸や口ゴボを改善したい場合は、MFT(Myofunctional Therapy)=口腔筋機能療法を取り入れるのも一つの方法です。
MFTでは、
- 舌の上げ下げやストレッチ
- 唇の閉鎖力を鍛えるトレーニング
- 頬の筋力アップエクササイズ
などを組み合わせて、「正しい筋肉の使い方」を再教育していきます。
歯列矯正と併用されることも多く、後戻り防止や横顔のバランス改善にも効果的です。
自宅でできる簡単なMFTメニューもありますが、より精度を高めたい方は矯正歯科や歯科衛生士、専門のトレーナーの指導を仰いでくさい。
歯列矯正で変わる?口ゴボ・口呼吸の改善例

口ゴボでお悩みの方にとって、歯列矯正は“見た目”だけでなく“呼吸や機能”まで整える手段になり得ます。
歯列矯正で「噛み合わせ+見た目+機能」が整う
歯列矯正治療というと、見た目の美しさだけを思い浮かべる方も多いかもしれません。でも実際には、歯列・顎・筋肉・舌の動きまでトータルで調和させる治療なのです。
たとえば、
- 前歯の突出を下げることで口元が引っ込み、Eラインが整う
- 噛み合わせが正しくなることで舌の位置が安定し、口呼吸が改善
- 唇が自然に閉じられるようになり、ほうれい線も目立たなくなる
など、見た目と機能の“両面”に変化が生まれることがよくあります。
実際の症例|横顔がスッキリ・自然に鼻呼吸できるようになった

たとえば20代女性のケース。
口元の突出感と「口が閉じられない」ことに悩み、裏側矯正を選択。治療中にMFT(口腔筋機能療法)も取り入れた結果、
- 横顔の印象がスッキリし、笑ったときの印象が柔らかくなった
- 舌の位置が正しくなり、無意識の口呼吸が減少
- 「鼻呼吸がラクにできるようになった」と実感されていました
このように、歯列矯正が筋肉や呼吸の機能改善にもつながる例は少なくありません。
表側・裏側・マウスピース矯正の違いと選び方
口ゴボや口呼吸を改善するうえで、自分に合った矯正方法を選ぶことも大切です。ここでは簡単に
矯正方法 | 特徴 | 向いている人 |
---|---|---|
表側矯正 | 最も一般的。微調整しやすい。 | 費用を抑えたい、対応症例が多い |
裏側矯正 | 装置が見えない。舌癖のチェックもしやすい。 | 見た目が気になる方、仕事柄バレたくない方 |
マウスピース矯正(インビザラインなど) | 取り外し可能で目立ちにくい。 | 軽〜中度の口ゴボ・舌癖が少ない方 |
ただし、口呼吸や舌癖の有無、骨格的な要素によってベストな治療法は異なります。カウンセリングを申し込むか、まだまだ検討中でしたら下記の記事を参考にしてください。
まとめ|口呼吸を改善すれば、口ゴボも人生も変わる

「口がポカンと開いてしまう」
「横顔に自信が持てない」
「ほうれい線が目立つ気がする」
これらのお悩み、実は“口呼吸”という無意識の習慣が引き起こしている可能性があります。
口呼吸が続くと、舌の位置が下がり、口元の筋肉がゆるみ、結果として歯並びや顔のバランスまで崩れてしまう。でも逆に言えば、呼吸や舌の使い方を整えれば、口元はもっと自然で美しく変えられる可能性があります。
歯列矯正で口ゴボを改善できると、横顔が整うだけではありません。
- 口が閉じやすくなり、鼻呼吸が自然にできるようになる
- いびきや口臭などのトラブルも軽減
- 「表情が明るくなったね」と言われるようになる
こうした変化が積み重なることで、気づけば“自信”という大きな副産物がついてきます。
「私の口ゴボも、矯正で良くなるのかな?」「このまま口呼吸を続けて大丈夫かな?」
そう感じたら、ぜひ一度、矯正歯科や口腔筋機能療法(MFT)に詳しいクリニックで相談してみてください。自分の状態を知ることが、改善への第一歩になります。
美しさと健康を同時に手に入れるために、今こそ“呼吸”と“口元”を見直してみましょう。未来の自分が、きっと感謝するはずです。